州ごとに紙幣が発行され中央銀行はなかった
さらに歴史を遡って、FRB成立過程を振りかえってみると、次のようになる。
アメリカでは、1776年の建国以来、「第1合衆国銀行」や「第2合衆国銀行」といった中央銀行設立の試みはあったものの、州それぞれが主権を持っているという考え方から実現に至らなかった。
アメリカでは、個々の民間銀行が金準備を使って紙幣を発行するというローカルカレンシーの時代が長い間、続いてきたのである。
ところが、1907年、ロンドンでアメリカの銀行の手形割引拒否に端を発する恐慌が起き、アメリカ国内の決済システムが一時的に混乱をきたすことになった。これを好機と捉えたのが、ロスチャイルド家である。
中央銀行システムをアメリカに持ち込み、そこから富を得ようと画策したのだという。
通貨を支配できれば法律などは度外視できる
ロスチャイルド家は、すでに1815年にイングランド銀行を支配下に置き、大英帝国の通貨発行権と管理権を手に入れていた。ロスチャイルド家の初代当主のマイヤー・アムシェル・ロスチャイルドは「私が一国の通貨を支配できれば、法律などは度外視できる」と言ったとされている。
連邦準備制度を設立するための法案を最初に議会に提出したのは、ジョン・ロックフェラーの義父(上院議員)だった。しかし、この法案は民主党の猛反対で頓挫し、その後、ロスチャイルド家は1912年の大統領選挙に民主党から出馬したウッドロー・ウィルソンに目をつけた。
こうして、ウィルソンが大統領になると、すぐに法案が提出され、前記したようにクリスマス休暇中の12月23日に議会を通過したのである。
もちろん、ロスチャイルド家とウィルソンとの間で密約があったかどうかを確かめる手段はない。
いずれにしても、FRBの創設は所得税徴収制度とセットだから、アメリカ国民の税金は図式的にはロスチャイルド家など、連邦準備制度創設に出資した国際金融資本の手に渡ることになった。
世界中の税金がFRBに流れ込んでいる
このように、中央銀行といっても、その設立のための資本金は国際金融資本が出している。そして、中央銀行は通貨発行権を持つことで、国家が発行した国債を担保として通貨を発行する。
こうすれば、永遠に国家は中央銀行に国債に対する利子を払い続けなければならない。その利子を生み出すのは、国民の経済活動から生じる税金だ。
ドルは世界の基軸通貨だから、世界中の人々の税金がFRBに流れ込むという図式になる。
ちなみに、日本銀行の場合は、その利益はほとんどが政府の国庫に納められる仕組みになっている。日銀の剰余金(利益)は、その5%が法定準備金というかたちで内部留保され、そのうち500万円が配当金(年5%)として流出し、残りは国庫に納付される。
この点は、FRBとは大きく違っている。
「実体経済の富」と「金利で生じる富」とは別物
このように見てくれば、中央銀行制度というのは、際限なく国家の借金を積み上げてしまうということがわかるだろう。
経済学では「信用創造」となどと言っているが、これは「無」から「有」をつくってしまうこと。金本位制度のときのような準備制度がないのだから、国が国債を発行するだけで、通貨は簡単に発行される。
そして、国債には金利がつく。その金利は税金で補填されるのである。
それなのになぜ、私たちは銀行におカネを預けるのだろうか? いまや日本では、金利はスズメの涙ほどもつかない。金融、通貨の世界というのは、じつはある意味のトリックで成り立っている。実際に私たちが働いて生み出した「実体経済の富」と「金利で生じる富」とは別物だ。
現在、世界中で採用されている中央銀行制度は、たかだか1世紀半ほどの歴史しか持っていない。イングランド銀行がポンドの発行を独占するようになったのは1844年、日本銀行が設立されたのが1882年、FRBの設立は前記したように1913年である。
現在、世界中で金融緩和によってつくられたマネーが溢れている。それが、株価を中心とする金融資産の高値を招いている。高株価は好景気というより、金融制度が招いたバブルである。
この続きは3月21日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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