汚職・賄賂を一掃して縁故資本主義を脱出
中国は、軍事面でもいまやアメリカを超えようとしている。すでに海軍はアメリカを超えて世界最大で、あと5年以内に艦艇数でアメリカの1.5倍に達する。
空軍はまだアメリカに遅れを取っているが、毎年100機以上の第4世代戦闘機を生産する能力を持っている。ミサイルにおいても備蓄数は世界一とされ、すでに極超音速ミサイルを保持している。
かつてアメリカの覇権を脅かしたドイツ、ソ連、日本は、経済規模においてアメリカを超えていなかった。しかし、中国はすでにアメリカを超えている。
最近、私はようやく認めるしかなくなったが、経済と民主主義、自由、人権などは関係しない。どんな政治体制を持とうと、的確な投資、開発、技術革新があれば、経済は成長する。
習近平政権で特筆しておきたいのは、中国から、汚職、賄賂が消えつつあることだ。習近平は、父親の習仲勲から高潔であることを受け継ぎ、次々と腐敗を摘発して、政敵を葬ってきた。
これにより、縁故資本主義からまともな競争による資本主義に転換したことで、中国の発展が担保された見ることができる。
シンギュラリティが来てAIが覇権を決定する
いずれにせよ、トランプの「誤った歴史、世界観」「妄想」「オレは偉いんだぞ」が続けば、必然的に世界は多極化に向かう。多くの同盟国がアメリカから離れ、独自路線を取らざるを得ななる。この状況は、中国にとっては有利である。つくづく、トランプの馬鹿さ加減には呆れる。
ただし、今後の覇権の行方、世界経済、国家動向など、すべてを決するのはAIではないかと思う。
いまや、ビジネスのほとんどはAIがないとできなくなった。今後は、政治も軍事もAIに左右されるのは確実だ。
最近、衝撃を受けたのはトランプの「迷言」「朝令暮改発言」などよりも、グーグルの元CEOエリック・シュミットの次の発言だ。
「次の1年でトップ数学者の知能をAIは獲得する。3〜5年でほぼすべての領域でAIが人間を上回り、AGI(汎用人工知能)が完成する。次の6年でAIは人の手を借りずに進化し、全人類の知能の総和を超える」
つまり、シュミットは、シンギュラリティの到来が予想以上に早まるとしているのだ。となると、国家の覇権、サバイバルも、AIが左右することになる。
米中で熾烈を極めるAGIの開発競争
こうした視点でいくと、いまもっとも注目すべきは、アメリカのAIのスタートアップ「スケール AI」である。先日、スケール AIはアメリカ国防総省から「サンダーフォージ・プロジェクト」の契約を獲得した。
このプロジェクトは、軍事意思決定者が情報をより迅速に分析し、AIの提案に基づいて判断を下すというもの。要するに、軍事をAIの判断に任せようというのだ。
こうなると、戦争はAI同士の戦いとなり、AIは戦争しないための強力な抑止力になるだろう。軍事ばかりではない、政治も外交もAIの活用が、これからどんどん進むだろう。
現在、AGIの開発競争は熾烈を極めている。
「チャットGPT」が登場してから3年が経ち、今年になって中国の大規模言語モデル (LLM)の「ディープシーク」が登場すると、もはやこの分野は「オープンAI」と「グーグル」の2強時代ではなくなった。
中国はAI関連の論文発表数と特許出願数で、すでにアメリカを上回っている。
はたして、トランプというとんでもない男の出現で、覇権交代は起こるのか? ただし、その前に多極化時代が来る。この多極化時代への胎動がすでに始まっている。
それにしても、一刻も早くトランプが権力を失ってほしい。そうでないと、この世界はまともに生きられる世界ではなくなってしまう。
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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