2025年6月10日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

山田順の「週刊:未来地図」 「愛子天皇」歓迎の読売社説が大波紋!なぜ保守派は「男系継承」にこだわるのか?(中)

「男系継承」を天皇制の根幹とする理由

 保守派、右派の多くはこれまで、「男系継承による万世一系」こそが、天皇制の根幹だとしてきた。これを守らなければ、天皇の正統性は失われ、皇統そのものの基盤が崩れると主張してきた。
 つまり、彼らにとって、女系継承の容認は日本の皇統断絶、伝統崩壊を意味し、女系天皇を認めてしまうと、それは正統性のない別王朝になるというのである。
 この理屈には一理も二里もあって、最近では、「Y染色体」の存在が、この理屈を強化している。
 人間の性別は、X染色体とY染色体によって決定され、男性はXYで、女性はXX。つまり、Y染色体は、男性の性別を決定する遺伝子で、父から子にのみに伝わる。したがって、天皇の血筋はY染色体によって男性にしか伝わらないというのだ。
「歴代天皇は父親のY染色体を受け継いできた。これが、神武天皇以来、ずっと続いてきた。それなのに、女系天皇を認めると、神武天皇由来のY染色体が継承されなくなる。これは万世一系の破壊である」
 というのが、彼らの主張なのだ。

AIが回答する「男系継承による万世一系」

 ここで改めて述べるまでもないが、男系継承は、「男尊女卑」「女性蔑視」とは、建前上別問題とされている。もし、そういう見地から論じられるなら、即座に、女性天皇、女系天皇が認められていいからだ。
 そこで、この問題の根幹である、天皇制の「男系継承による万世一系」は本当なのかどうか、資料、文献などを当たって述べるより、いちばん手っ取り早いAIに聞いてみることにした。
 AIが出してきた回答は、次のとおりである。
《「万世一系」は、天皇が神武天皇から現在に至るまで男系で126代も継承されていることを指す言葉です。これは、皇位継承が歴史的に男系に限定されてきたことを意味し、科学的な根拠はありません。

「万世一系」の歴史と背景
・男系継承の歴史:日本の歴史では、天皇の位は男系継承の伝統が確立していました。
・戦前の思想:戦前には、万世一系は日本が世界で唯一の単一王朝国家であることを強調し、天皇を神聖視する根拠として用いられました。
皇室典範の制定:明治時代に皇室典範が制定され、皇位継承は男系男子に限定されるようになりました。
女性天皇の可能性:近年では、皇室典範の改正を求める声も上がり、女性天皇や女系天皇の可能性も議論されています。

科学的な側面
・遺伝子:天皇の血統が万世一系であるという主張は、遺伝的な意味合いでは、男系継承が遺伝子を父から子へ受け継ぐことを意味するにすぎません。
・女性天皇の可能性:近年では、女系天皇を認めることによって、天皇の血統が母から子へ受け継がれる可能性も議論されています。

まとめ
「万世一系」は、歴史的な事実と伝統に基づいており、科学的な根拠はありません。近年では、皇位継承のあり方について議論が進み、女性天皇や女系天皇の可能性も視野に入れています。

「万世一系」に科学的な根拠がない4つの理由

 さて、ここからは、AIが言うように、「万世一系」に科学的な根拠がないことを、さらに述べてみたい。現在では、遺伝子の解析があらゆる分野で用いられ、歴史が書き換えられているからだ。
 まず第1に、神武天皇由来のY染色体というが、これまで歴代天皇の誰1人として、遺伝子を調べられたことはない。ないのに、それが続いてきたと言えるのは、まったく科学的ではないし、根拠がない。
 第2に、天皇家の長い歴史に比べれば、遺伝子が発見されたのは、およそ100年前のことにすぎない。
第3に、Y染色体以外にも形質を伝えるための遺伝的なキャリアはいくつも存在する。なのに、なぜ、性差を決めるY染色体だけに限らなければならないのか、明確な理由がない。
 第4に、私は専門外なので断言はできないが、遺伝子について学んだ人間なら、遺伝には「突然変異」「相同組換え」があることが常識なのに、それが無視されている。

この続きは6月12日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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