トランプ米大統領は6月15日、ニューヨークやシカゴなど大都市で、不法移民摘発を強化する考えを示した。ニューヨーク市内では、市民と米移民税関取締局(ICE)との間で緊張感が高まっている。4月からは、正規の移民に対してもグリーンカードやパスポートに貼られたビザを常時携帯することを義務付けている。正規滞在とはいえ、在米日本人や日本からの観光客も一定の警戒が必要となってきた。

ICEは5月、メキシコ出身・カリフォルニア州在住でグリーンカードを58年間保持するヴィクター・アヴィラさん(66)の身柄をサンフランシスコの空港で拘束した(サンディエゴのABCによる)。在日米軍の海兵隊に所属する息子を訪問した直後で、米市民であるアヴィラさんの妻は入国できた。アヴィラさんは6月17日現在、拘束されたままだ。理由は、過去に薬物を保持し運転した容疑での逮捕歴だという。椅子に座った状態で寝なくてはならない空港の一室に数週間拘束され、さらに不法移民拘束センターに移送された。アヴィラさんは、弁護士秘書を15年間務めており、同僚や家族が寄付金サイト、ゴー・ファンド・ミー(gofundme)を使って寄付を募り、身柄の解放を訴えている。
アヴィラさんの例は、ICEがグリーンカード保持という合法の移民に対してすら取り締まりを強化している表れだ。飲酒・薬物影響下での運転、スピード違反、禁止されている場所での喫煙や飲酒など「軽罪」に当たる行動を慎む必要がある。観光客も同様だ。
ICEに職質されたときなどは、合法滞在であることを証明するグリーンカードやビザを用意しておく必要はさらに高まってきている。弁護士は、ICEに拘束された後に連絡できる友人などの携帯電話番号を「暗記」しておくことを勧めている。スマートフォンが取り上げられるケースが多いためだ。
また、スモールビジネスで移民が雇用主である場合、ICEが職場に来た場合、まずは「ドアを開けない」で、裁判所の捜索令状があるかどうかをドア越しに確認する必要がある。
「知らない人から路上で出身国を聞かれても答えてはいけない。自宅などに来たら、ドアを開けず、質問にも答えてはダメ」と話す専門家もいる。アメリカ合衆国憲法で、移民の権利が認められているためだ。
ニューヨーク市内では、ICEの過剰な摘発に対する反対派市民とICEとの間で緊張感が高まっている。
ICEは17日、ニューヨーク市会計監査官のブラッド・ランダー氏を逮捕した。移民裁判所のヒアリングを視察し、該当の不法移民に付き添って法廷を出たところ、ICEが移民と引き離し、「歩いていただけだ」と反論したランダー氏を逮捕した。容疑は「司法妨害」だったが、ランダー氏は翌日解放された。
ランダー氏は米市民で元市議会議員、選挙で選ばれた会計監査官であるにもかかわらず、不法移民やテロリストを取り締まるICEに逮捕されたことは、市民に衝撃を与えている。
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