2025年8月18日 Miki COLUMN

『ちょっと得するNY20年主婦のつぶやき』(11)アメリカで販売されている「溶けないアイス」の秘密

写真はイメージ(photo: Unsplash/Maja Erwinsdotter)

写真はイメージ(photo: Unsplash/Maja Erwinsdotter)

◆ なぜ、アイスクリームが溶けるのか?

そもそも、なぜアイスクリームは溶けるのでしょうか? ”暑いから” ということなのですが、厳密に言うと、(1)アイスクリームと周囲との温度差と(2)それによる成分構造の変化によるものです。

1. 外の温度が高いから(熱の移動)

アイスクリームの凍った状態(0℃以下)と、周囲の空気(例えば夏は30℃以上)の間に温度差があります。このとき、熱は高い方(外気)から低い方(アイスクリーム)へと移動します。アイスクリームが受け取った熱によって、固体だった成分が液体に変化するのです。つまり ”溶ける” のです。

2. アイスの成分の構造変化によって

同時に、アイスクリームには、水分・脂肪分・糖分・空気がバランスよく含まれています。冷えている間はそれらが安定していますが、熱を受けると、その構造が崩れて液体状態へ戻っていくのです。

◆ “溶けない” アイスクリームとは?

実は ”溶けない” アイスクリームは、日本にもアメリカにも存在しており、上記(2)のアイスクリームの成分構造を長持ちさせる技術が使われています。

日本では、近年、金沢大学の研究チームによって開発されたいちご由来のポリフェノールを使ったアイスが代表的のようです。「金座和アイス」で有名ですよね。

いちごポリフェノールという天然成分を加えることで、アイスクリームのなかの油脂が、水分と空気の細かな泡を取り囲む状態を作るのです。それにより、アイスの成分構造が安定し、40℃でも数時間 “溶けないアイスクリーム” ができるというわけです。

一方、アメリカの場合は、溶けないアイスクリームは、比較的古くからありました。安定剤や増粘剤乳化剤などの食品添加物を使って構造を保つスタイルです。これらは水分をゲル状に固定し、形崩れを防ぐ役割があります。

代表的なものとしては、Nestleの「ドラムスティック」やWalmartのアイスサンドがあります。外見は変わらないのですが、内部はじわじわと溶けていくというもので、「加工食品としての進化」が見られます。

溶けるのを防ぐために、Soy lecithin(乳化剤), Guar gum(安定剤), Monoglycerides (乳化剤)などの食品添加物が使われています。

◆ どう溶けるのか? 試してみた

実際、ドラムスティックが溶けるかどうか試してみました

左から順番に、開封後すぐ、2時間後、3時間後の状態を示しています
4時間後からは、クリーム自体は溶けずに、水分が出て分離してきます

◆ 日本とアメリカの特徴をまとめると…

どちらも “溶けない” 点がポイントですが、天然素材を使うか、人工加工素材かというアプローチの違いが興味深いところです。

項目日本:
溶けないアイス
アメリカ:
Nestleドラムスティック
アメリカ:Walmartア イスクリームサンドウィッチ
発売時期2017年(石川県金沢で開発)1928年発売、1991年にNestleが買収同じく昔から販売。2014年に、SNSで「溶けない」と話題に
溶けにくい理由天然のイチゴ由来ポリフェノールで脂肪と水分を安定化安定剤・乳化剤で外見をキープ多数の添加物で形を保つ
主な原料牛乳・砂糖・ポリフェノール(自然派)クリーム・砂糖・添加物など乳製品代替成分+安定剤多数
食感・味わいやや固めだがクリーミーなめらかで食べやすい甘さが強く、少し人工的

◆ 健康への影響

1. 短期的には、健康に問題があるわけではない
日本や米国で使用が認可されている添加物は、通常の摂取量では健康への急性の害はほぼないとされています。

2. 過剰摂取への注意
もちろん一度にたくさん食べるとお腹がゆるくなったり、消化に負担がかかる可能性があります。

3. 長期的リスクは研究途上
一部の添加物は腸内細菌バランスに影響を与える可能性があるという報告もあり、日常的な大量摂取は避けたほうが無難です。

賢い楽しみ方、要はほどほどに

ちなみに、ドラムスティックにはアイスクリームではなく「Frozen Dairy Dessert」と下に小さく書いてあります。でも見た目がアイスクリームだし、アイスクリームトラックでも売ってるし・・・つい買ってしまいますよね。

(1)毎日ではなく、時々の楽しみにする(2)成分表示を見て添加物の種類と量を確認(3)小さめのサイズやシェアして食べる(4)普通のアイスやフローズンヨーグルトと交互に楽しめればいいと思います。

アイスクリームの本来の基本材料は、牛乳、砂糖、卵です。暑さも気になりますが、健康はもっと気になります。それらのシンプルな素材だけで作られたアイスクリームもありますし、やはり口に入るものは、原材料を確認しながら選ぶのことも重要だと思います。

例えば、こちらは、原材料はとてもシンプルです。クリーム、脱脂粉乳(スキムミルク)、砂糖、卵黄、バニラエキスのみ

「Simple is the best」と言われるように、シンプルなものには、やっぱり安心感と自然なおいしさがありますよね。

写真はイメージ(photo: Unsplash / Jared Erondu)

技術の進歩により、食品のかたちや性質もどんどん進化しています。「溶けないアイス」は暑い夏の新たな選択肢になるかもしれません。ただ、涼しさとおいしさを楽しみつつ、食材の成分や体への影響にも目を向けることが、より豊かな食生活につながると思います。

【今日のひとこと】

アイスクリームは、冷たさの中に、一瞬の幸せが詰まった食べ物ですよね。でも、その幸せはずっと続くものではなく、時間とともにゆっくりと溶けていく。だからこそ、私たちは「今この瞬間」を大切に味わうのかもしれません。

便利さを追求してさまざまな食品が研究・開発されるのは素晴らしいことだと思います。でも、自然の摂理にはできるだけ逆らわずにいたいという気持ちもあります。アイスクリームは、本来なら暑さで少しずつ溶けていくもの。「溶けるものは、溶けるままに」そんな素直な感覚も、大切にしたいですね。

                       
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