2025年8月26日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

山田順の「週刊:未来地図」 NVIDIA時価総額4兆ドルはバブルか? 「ヒューマノイド」があらゆることをやる近未来 (下)

■ドットコム・バブル」と同じでは?という懸念

当然というか、NVIDIAの4兆ドル達成で「バブルではないのか?」という声が巻き起こった。この声は、1兆ドル達成時からずっと続いており、バブル崩壊恐怖症患者を増やしてきた。
というのは、NY市場は、NVIDIAを含むビッグテックの寡占状態になっていて、「マグニフィセント7」(Magnificent Seven:GAFAMのGoogle、Apple、 Meta、Amazon、Microsoftに、TeslaとNVIDIAを加えた7社)で、市場の約30%も占めているからだ。
かつてグーグル、アップルなどのビッグテックは、「ドットコム・バブル」を起こしている。そのときと状況は同じではないかと言うのだ。
経済理論では、株価は将来受け取る配当金の現在価値を合計したものとされる。はたして将来、そんな額の配当金を得られるのか?得られるわけがないと言うのだ。
しかし、バブルが弾けようと弾けまいと、投資家たちが期待する未来は確実にやって来そうだ。

■なぜ機関投資家はNVIDIAに投資するのか?

NVIDIAの大株主には、主要な機関投資家が名を連ねている。The Vanguard Group(バンガード)や BlackRock(ブラックロック)などである。彼らがNVIDIAに投資する理由は、まず、NVIDIAが生成AIに不可欠なGPU(画像処理半導体)で圧倒的なシェアを持っていること。そして、AI開発が続く限りGPUの需要が高まることにある。
さらに、NVIDIAはGPUだけに止まらず、ヒューマノイド開発でも世界をリードしていることがある。
NVIDIAは、「GTC」 (GPU Technology Conference)を主催し、そこで、AIとアクセラレーテッド・コンピューティングに関する最新技術を次々と発表してきた。
技術に関することは、専門外なので私にはわからないが、報道や関係者の話から、NVIDIAがヒューマノイド開発に欠かせない企業であることは明白だ。
「GTC2025」は、3月にシリコンバレーのサンノゼで開かれたが、そこには世界中から、AIの開発者と研究者、IT分野のクリエーター、ハイテク企業のリーダー、そして政治家までが集まった。
すでにNVIDIAは、2024年の「GTC 2024」でヒューマノイド用の基盤モデル「Project GR00T」を公開し、ロボット業界向けにChatGPTのような基盤技術を提供することを加速させている。

■ヒューマノイド開発はどこまで来ているのか?

生成AIの登場で、ヒューマノイドが日々、進歩を遂げている。これまで「人型ロボット」と言われてきたが、その運動能力は目を見張る。
テレビの番組、ユーチューブなどで見ただけだが、すでに人間と同じように歩き、走り、宙返りはするし、ダンスもする。そして、失敗を繰り返しながら、自ら学習していく。
これらの映像を見れば、次は本当に人間と同等なものができる。そう想像してしまう。ユーチューブを見ていると、ビックテックからITスタートアップまで、毎週のように新しいヒューマノイドの動画が公開されており、ここまで来たのかと驚くばかりだ。
ただし、そうした動画の発信元は、ほとんどアメリカと中国で、日本は見る影もない。
もちろん、これらのヒューマノイドは、前記したNVIDIAが公開した「Project GR00T」を基盤モデルとして開発されている。

■披露された14体の人型ロボットに日本発はなし

NVIDIAは人型ロボット用のコンピューター「Jetson Thor」も提供しているという。これにより、高度なAI処理をロボット本体で実行することが可能になり、リアルタイムの意思決定ができるという。
今年の1月、ラスベガスで開催された「CES2025」(Consumer Electronics Show 2025)で、NVIDIAのジェンスン・ファンCEOは、14台のヒューマノイドロボットとともに壇上に上がり、基調講演をした。
このとき、壇上に上がった14台のヒューマノイドの創業国は、アメリカと中国が2強で、ほかはカナダ、ドイツ、イスラエル、ノルウェーの4カ国。日本のものはなかった。
これまで、ロボット及び人型ロボットにおいて、日本は高い技術を誇っていた。しかし、生成AIの登場とともに、その技術は時代にビハインドし始めたと、専門家は言う。

この続きは8月28日(木)発行の本紙(ウェブサイト)に掲載します。 
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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