■人型ロボットが「人型」をしている理由とは?
アマゾンは、2023年10月、物流センターに人型ロボットを導入すると表明し、その後、同社が投資するスタートアップの「Agility Robotics」が開発した人型ロボット「Digit」を、テネシー州ナッシュビルとルイジアナ州シュリープポートにある物流センターに導入した。
ここでは、すでに人間とともにロボットが協働しているが、人型ではない産業用ロボット(ロボットアーム、ロボットリフトなど)に加えて人型のヒューマノイドが導入されたことで、作業は格段に効率化した。
人型ロボット「Digit」は、2足歩行し、両腕を使って物を持ち上げたり、移動させたりすることができる。
アマゾンは人型ロボット導入の理由について、「サイズと形状が人間向けに設計された建物によく適している」点を挙げた。これはヒューマノイド開発がなぜ加速化しているかの最大の理由だ。
この社会は、すべての空間が、人間が暮らしやすく、作業しやすくつくられている。すなわち、人型ロボット=ヒューマノイドがもっとも生産性が高く、人間がしていた作業を代替できるのだ。
■ヒューマノイドが仕事を奪い、人間は不要に!
人型ロボットが、人間と同等かそれ以上の頭脳を持ち、自律的になんでもできるようになれば、彼らは、ありとあらゆるところに導入される。完全自律型のヒューマノイドとなれば、ヒューマノイド同士でコミュニケーションを取り合い、作業をレベルアップしていく。また、申しわせて適宜交代もする。
さらに、作業を競い合い、勝ち抜いたヒューマノイドと敗者を入れ替えれば、さらに高度なヒューマノイドに進化する。こうなると、工場はもちろんのこと、物流、運送、工事、飲食、介護、医療などあらゆる現場で導入され、おそらく警察でも軍隊でもヒューマノイドが活躍するようになるだろう。
つまり、ヒューマノイドは人間の仕事を奪い、ほぼあらゆる分野で人間は不要となる。しかし、本当にこうなるのかどうか、私は断言できない。
ただ、ヒューマノイドが活躍する近未来は、これまで言われてきた「AIが仕事を奪う」イメージとは違っている。
■知的労働ばかりか単純労働も奪ってしまう
AIが登場して以来、「AIが仕事を奪う」ということがずっと言われてきた。奪われる仕事というのは、高学歴・高賃金の知的労働、いわゆる専門職であると言われてきた。すなわち、医師、会計士、弁護士、司法書士、教師、ファンドマネージャー、バンカーなどである。
しかし、ヒューマノイドとなると、これはもう、単純労働も人間以上にこなすので、工場労働者、飲食店労働者、建設労働者、介護労働者などのエッセンシャルワーカーの仕事も奪ってしまう。つまり、人間がやる仕事はほとんど代替されてしまう。
そうなると、この社会はいったいどうなるのか?
本当によくわからない。楽観論に立てば、「人間にしかできない仕事は残る」というが、それがいったいなにかわからない。誰もが、豊富な想像力とスキルを持って生まれてくるわけではない。
■優れたヒューマノイドをつくった企業が富を独占
いずれにしても、この先、早急に、社会のシステム、教育の内容、企業活動、政治のあり方など、あらゆることを大きく変える必要があるだろう。そうしないと、ヒューマノイドと人間が共生する未来は暗黒時代になりかねない。
ほとんどすべてをAI(今後できるであろうAGI)とヒューマノイドに任せる。そうして、ヒトは、複雑な作業、危険な労働や単純労働から解放され、自由に生きられる。
というユートピア話は、にわかには信じられない。自由に生きるための原資(マネー)はどうやって得るのか。AIは仕事だけではなく仕事から得られる収入も奪っていくからだ。
このままテクノロジーが進むと、最高の技術と人材を集め、早く、安く、優れたヒューマノイドを大量につくった企業が富を独占する。そして、そうしたヒューマノイドを導入、活用した企業が市場を支配していく。「勝ち組」と「負け組」がはっきりし、格差は際限なく広がっていく。
言えるのは、時価総額4兆ドルを達成したNVIDIAが、現在の最大の勝ち組であるということだけだ。
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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