2025年9月2日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

山田順の「週刊:未来地図」 戦後80年、出すのか「首相談話」? 日本が「終戦(敗戦)記念日」にすべきこと! (上)

石破首相というのは、本当に頑固、頑迷だ。自民党内の大方の議員も、国民世論の大勢も反対しているというのに、戦後80年の首相談話(政府見解)を出すと、国会で明言したのだ。
 戦後80年に関しては、「節目の年」だけに、メディアは例年以上の大報道をする。そんななかで、首相談話が発出されれば、それは大きな反響を呼ぶ。いまさら「反省と謝罪」を繰り返すとは思えないが、もしそうだとしたら、これほど情けないことはない。
 いま一度、日本人は、先の世界大戦に敗北した意味を考えるべきだ。 

■「見送り」報道の後に一転して「発出」発言

 8月2日、時事通信は『石破首相、「戦後80年見解」当面見送り 終戦記念日・降伏調印日含め―情勢次第で断念も』という記事を配信した。ほかのメディアも、ほぼ同様の報道をした。
 ところが、4日、衆院予算委員会の集中審議で、石破首相は、立憲民主党の野田党首の質問に、「発出が必要」と明言しのだ。「形式はともかく、戦争を2度と起こさないための発出が必要だ。私自身の思いとして強いものがある」と。
 退陣要求にも耳を貸さず。反対の声が強い首相談話の発出にもこだわる。これほど、頑固、頑迷な首相は見たことがない。これまで戦後50年には村山談話、60年には小泉談話、70年には安倍談話が、それぞれ閣議決定されて発出されてきた。
 そのたびに、とくに中国、韓国から強い反発が起こり、日本人としてはもういい加減にして欲しいという思いが募っている。だから、首相発言を聞いて「また反省と謝罪を繰り返すのか」という声が巻き起こった。

■子どもたちに宿命を背負わせないとした安倍談話

 毎年、8月15日の終戦記念日(敗戦記念日の方が適切)がくるたびに、嫌な感じになる。「過ちを繰り返しません」という言葉に、戦後世代として反発を覚えるからだ。「侵略戦争」をしたのは、戦前の世代であり、なぜ、自分たちのような“関係ない”世代が「反省と謝罪」をするのか納得がいかないからだ。
 だから、戦後70年のとき、安倍晋三首相(当時)は、「痛切な反省と心からのおわび」を表明した歴代内閣の立場は変わりないとしながら、「あの戦争になんら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」と述べたのである。
 これは、それまでの談話とは明らかに違うもので、「謝罪」に一定の区切りを付けたと言えた。そのため、旧安倍派議員らの間では「新たな談話は必要ない」との声が強く、また、国民世論の大勢もそういう思い出あると言えた。

■アメリカには「対日戦争勝利」記念式典はない

 それにしても、日本の終戦記念日は異様である。同じように、終戦記念日を持つドイツ、イタリアとも異なる(後述)。また、戦争の記念日というのは、勝利した記念の日が当たり前で、戦勝国はみなその日を持っている。
 ただし、対日戦争の勝利記念日は各国で異なるうえ、記念行事も異なる。
 まず、アメリカだが、アメリカでは「対日戦勝記念日」を「V-J Day」(Victory over Japan Day)と呼び、その日を9月2日としている。これは、日本が東京湾上の戦艦ミズーリ艦上で降伏文書にサインした日である。
 しかし、アメリカは「V-J Day」に記念式典など行わない。アメリカはこれまでに幾度となく戦争をしてきており、そのたびに戦勝記念式典をやっていたら、カレンダーがすぐに埋まってしまうからだ。
 戦争に関する行事としてアメリカでもっとも大きいのは、毎年5月の最終月曜の「メモリアルデイ」(Memorial Day)である。この日は国民の休日で、国中で半旗が掲げられ、戦没者への追悼式典が行われる。これは、南北戦争 (The Civil War)の戦没者への追悼が始まりで、アメリカの戦争におけるすべての戦没者に哀悼を捧げる日になっている。

この続きは9月4日(木)発行の本紙(ウェブサイト)に掲載します。 
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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