2025年9月11日 NEWS DAILY CONTENTS

「傷は消えない」のに暴力は続く | 9/11から24年、前日にカーク氏暗殺

2001年9月11日に発生した米同時多発テロから24年が経った。ニューヨークの世界貿易センターでは、倒壊したビルの犠牲になった約3000人の名前を読み上げる式典が開かれた。式典会場付近に集まった市民が「傷は消えない」「胸が張り裂けそうだ」と今でも記憶を語る。しかし、10日には保守派インフルエンサーのチャーリー・カーク氏(31)がユタ州の集会で何者かに射殺された。学校での銃撃事件も相次ぎ、不条理な暴力が市民を襲うケースが増している。

黙祷を捧げる市民(11日、世界貿易センター / Photo: Keiko Tsuyama)

米メディアによると、ヴァンス米副大統領はニューヨークの式典に参加する予定だった。しかし、殺害されたカーク氏の家族に会うため急遽ユタ州に向かった。9/11は過去23年間、テロや暴力を許さずアメリカの「団結」を訴える日だった。カーク氏の「政治的暗殺」で、トランプ米大統領が声明で「過激左派」を名指しし、極右のインフルエンサーやグループがSNSで「戦争だ」と主張するなど一気に緊張感が高まっている。

9/11の遺族は、亡くなった人の顔やツインタワーをプリントしたTシャツなどで早朝から会場に集まってきた。30代の男性(匿名希望)は「いまだに心が締め付けられる。24年経っても自分が受けた悲しみを吐露するに至っていない」と涙目だ。しかし、24年前は数千人の市民が会場の外に集ったが、今はいちばん近いゲートで数十人に過ぎない。学校の授業で教える機会も減少し、ニューヨーク市内での風化は確実に進んでいる。

崩壊した南北のタワー跡に造られたメモリアルプールの墓碑銘には多数の花が捧げられていた(11日、世界貿易センター北棟跡 / photo: Keiko Tsuyama)

一方で、犠牲者を偲び、新たな活動を始めている家族もいる。地元メディアNY1によると、株トレーダーだった故フランク・ドイルさんの家族は非営利法人(NPO)を立ち上げ、南アフリカで何千人もの子どもを養う学校を16校も新設したという。

ツインタワーや付近の建物の崩壊で犠牲になった市民は2977人に上り、そのうち300人以上が消防士だった。近くにあったニューヨーク証券取引所はビルの損傷から9月17日まで取引を停止するなど、世界中に衝撃を与えた。 

 取材・文/津山恵子

                       
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