アメリカでは、抗アレルギー薬「ベナドリル(成分名:ジフェンヒドラミン)」を常備している家庭が多い。だが、マサチューセッツ総合病院のアレルギー専門医アンナ・ウルフソン医師は、日常的にこの薬が危険な使い方をされているという。特に食物アレルギーの症状が出たときに使うと、強い眠気で体の変化に気づかず、対応が遅れる危険がある。本来は、アドレナリン(エピネフリン)が第一選択であるべきだと警告している。CNNが伝えた。

◆「もう時代遅れ」と専門家が提案
今年2月、ジョンズホプキンス大学とカリフォルニア大学サンディエゴ校の専門家が、この薬を「古くて危険」として市販薬や処方薬から外すか、少なくとも薬局カウンターの裏に置くべきだと提案した。
ジフェンヒドラミンは、1946年に承認された第一世代抗ヒスタミン薬で、アレルギーやかぜ、不眠などに使われてきたが、その後開発された薬(第二世代、第三世代)に比べて副作用が多く、特に子どもや高齢者にはリスクが高いとされる。
◆ 眠気や認知機能低下などの副作用
ジフェンヒドラミンは、アレルギー反応を抑える一方で、脳にも作用し、眠気や判断力の低下、心臓への影響を引き起こす可能性がある。高齢者では、体内に長く残り、転倒や混乱のリスクが高まる。子どもでは、過量摂取のリスクだけでなく、興奮、極端な眠気、昏睡といっった反応による事故も報告されている。SNSでの危険な「チャレンジ動画」が原因で、入院や死亡例も起きている。
◆ かぜや睡眠目的には不向き

小児科医らは、かぜ対策や睡眠のために使うのは効果がないうえ、安全性にも欠けると指摘している。花粉症やじんましん、かゆみには、ロラタジン(クラリチン)、セチリジン(ジルテック)、フェキソフェナジン(アレグラ)など、少なくとも第二世代抗ヒスタミン薬が、眠くなりにくく、長く効くため安心だと推奨している。
◆ 「そろそろお別れの時」
ジフェンヒドラミンは、300種類以上の市販薬に含まれているが、新しい薬と比べて優れた効果は確認されていない。論文の著者らは「かつては役立った薬だが、今は副作用の少ない薬に取って代わられている。公衆衛生のためにも、そろそろお別れの時だ」と結論づけている。
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