2025年10月17日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

山田順の「週刊:未来地図」 少子化の根本原因は若者の貧困化 どうする?中間層の若者が結婚できない現実!(完)

■少子化の原因は未婚化。未婚化の原因は貧困化

 さて、ここで話を少子化にすると、日本の出生数は、1949年の約270万人をピークにずっと減り続けている。そして、2016年以降は減少ペースが加速し、2024年には初めて70万人を下回る過去最少の約68.6万人を記録した。
 この止まらない少子化に対して、政府は「異次元の少子化対策」(岸田前内閣)を打ち出し、2023年には「子ども家庭庁」をつくった。しかし、やっていることは、児童手当の拡充や出産育児一時金の引き上げなどで、少子化対策とは言えないものばかり。
 政府は、いまだに少子化の根本原因をわかっていないとしか言いようがない。
 実際、今年になっても少子化は加速している。すでに発表された2025年5月までの人口動態速報によれば、5カ月間累計で婚姻数は4.3%減、出生数は3.8%減。このままいけば、今年の出生数は65万人台に突入する可能性が高い。
 話は極めてシンプル。結婚(婚姻)が増えない限り、出生数は下げ止まらない。つまり、少子化の原因は未婚化にある。そして、なぜ婚姻が増えないかと言えば、若者たちが貧困化しているからだ。

■政府や自治体がやっている無意味な少子化対策

 それにしても、政府も自治体も、やっても無駄、効果がないことを、なんの目算もなしに続けている。子育て支援をどれだけ充実させても出生数は増えない。結婚数を増やそうと、結婚支援(婚活支援)する自治体も多いが、これもまた効果は見込めない。
 すでに年間予算5兆円以上をつぎ込んでいる子ども家庭庁の酷さといったらない。《「こどもまんなか」社会を実現するために、こどもや若者の皆さんの声をしっかりと受け止めて》と言っているのに、子育て家庭への単なるバラマキをやっているだけだ。
 子育て支援サービスの充実、児童虐待防止対策、幼児教育のための補助などは、少子化対策とは言えない。
 全国各地の自治体にある、婚活支援は、少子化対策の1つとされている。子ども家庭庁によると、2024年2月の時点で、全国の47都道府県に少子化対策の実施状況を尋ねたところ、41か所で婚活イベントを実施していたほか、37か所で結婚支援センターを運営していた。これは、自治体が結婚相談所になっているのと同じで、もとより、婚姻数増加には結びつかない。

■人口の絶対数が減れば社会が回らなくなる

 かくして、少子化による人口減は止まらない。止まらないどころか、今後、さらに加速する。日本の出生数が70万人を切るのは、国立社会保障・人口問題研究所の未来予測では2039年とされていた。それがもう70万人を割り込んでしまったのだから、なんと、想定より15年も早い。
 となると、人口問題研究所が2056年に1億人を割るとした総人口の予測は、2041年と圧倒的に早まる。
 人口減社会がどうなるか?
 その恐ろしさについては、すでにさんざん言われてきているので、もうここで、私が書く必要はないと思う。ベストセラーのシリーズ『未来の年表』(河合雅司・著)などの詳しく書かれているし、新聞、雑誌、ウエブの記事も山ほどある。
 当然だが、出生数がピーク時の4分の1なのだから、人口の絶対数が減る。ということは、単純に社会の担い手の数が減るということだ。
 つまり、インフラの整備・維持も、年金などの社会保障も、公共サービスも、そして財政も、なにもかも維持できなくなる。
 それなのに、この国ではいまだに高速道路、新幹線にリニアまでつくっている。いったい、誰が乗るのか? 税収も減って返すのが不可能とわかっているのに、大量の赤字国債を発行している。

(このまま、今回の記事を終わるのは気がひけるので、最後に、人口減社会の乗り切り方を書いておく。これは2つしかない。いまの状態を維持したいなら、毎年、人口減に見合う100万人規模の移民を受け入れる。それが嫌なら、日本社会全体をダウンサイズ、コンパクト化し、予算、インフラ、公共サービスなどあらゆるものをどんどん削っていく。でも、どちらもやらないだろうと、私は思う)(了)

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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