2025年12月18日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

中国に完敗し、同盟国を苦しめ、私服を肥やすトランプのペテン政治はいつまで続く!(完)

NY市長選で破れ、連邦最高裁で違憲が濃厚に

 こんなことをしていればどうなるか。当然、支持率は落ち、逆風が吹く。11月に入って、トランプへの強烈な逆風が吹いた。
 1つ目は、4日に行われたニューヨーク市長選挙で、民主党の急進左派、ゾーラン・マムダニ・ニューヨーク州下院議員が当選したこと。もう1つは、連邦最高裁が5日に行った口頭弁論で、トランプ関税が違憲であるという判断が優勢になったことだ。
 どちらも、これまでの配信記事で詳しく伝えてきているので、ここでは多くを触れない。ただ、以下の2つの点を指摘しておきたい。
 NY市長選と同時に行われた2州の知事選で、いずれも民主党候補が勝った。バージニアではアビゲイル・スパンバーガー元連邦下院議員。ニュージャージー州ではマイキー・シェリル連邦下院議員。2人とも女性で、反トランプ票を上乗せして当選した。
 つまり、このトランプ離れは今後間違いなく進み、来年の中間選挙では共和党は大敗するのが確実になったということだ。
 次に、連邦最高裁の最終判断が下るのは、半年以内、早ければ年明け早々とされる。ここで、ほぼ間違いなくトランプ関税に「違憲」判決が下るということだ。

1人当たり2000ドルを配るというバラマキ

 自分を「天才」(genius)と広言してきたトランプは、間違いは認めないが、血迷うことはある。
 11月9日、トランプは自身のソーシャルメディアに「関税に反対する人間は愚か者である」と投稿し、「われわれは数兆ドルもの資金を調達していて、まもなく37兆ドルという巨額の債務の返済を開始する」と強調し、高所得者を除くすべての国民に、「1人当たり少なくとも2000ドルの配当が支払われる」と述べた。
 逆風が吹き出したので、なんとか挽回しようと、バラマキに走ったとしか言いようがない。1人あたり2000ドルを配るといっても、原資は税金である。
 この投稿に慌てたベッセント財務長官は「大統領とまだ直接話してはいない」と述べ、2000ドルの配当には、7月に成立した減税法案に盛り込まれた減税(チップ非課税や残業非課税など)も含まれると述べた。
 本当にこの政権はデタラメで、主要閣僚はみなトランプの“茶坊主”である。 NY株価は高騰を続けているが、インフレは進み、国民生活は物価高で日に日に困窮している。

ファミリービジネスで巨万の富を荒稼ぎ

 11月10日、トランプはFOXニュースのインタビューで、アメリカ国民の大多数が自身の経済状況を不安視しているとの世論調査の結果に対して「それは偽物だ」「民主党による詐欺だ」だと答えた。
 本当になんという傲慢ぶりだろうか。
 トランプは、昨年、自身の裁判で、裁判所に対し現金がなくなりつつあると訴えていた。5億ドルの支払い命令を1億ドルほどに減額してもらえないか。そうしないと所有不動産を投げ売りするしかないと申し立てていた。
 しかし、大統領に返り咲いた今年、ファミリービジネスで巨万の富を得た。
 以下、そのことを報じる報道が3本あったので、それを紹介したい。 
「ロイター」は、トランプの長男ドナルド・トランプ・ジュニアと次男エリック・トランプが、アメリカン・ビットコイン株上場により、持ち分評価額が15億ドルに達したと報道した。
 「フォーブス」は、この兄たちとともに暗号資産企業を立ち上げた末息子のバロンの保有資産が1500万ドルになったと報じた。
 さらに続けて「フォーブス」は、トランプ・ジュニアの資産が1年間で10倍に急増したことを報じた。彼は、父の再選後11社の経営側ポストに就任し、荒稼ぎしたのである。

どうなる?再燃した「エプスタイン・スキャンダル」

 トランプのアキレス腱とされているのは、「エプスタイン・スキャンダル」である。もし彼が、少女への性的虐待に関わっていたといたら、間違いなく「弾劾」され失脚する。
 だからトランプは、これまでエプスタインとの関係を、単なる「友人」としてきた。そして、MAGAに約束したにも関わらず、「エプスタイン・ファイル」の全面公開に応じなかった。
 しかし、11月12日、下院の監視・政府改革委員会の民主党議員団は、新たなメールを公開し、トランプの疑惑は深まった。そのメールのうち2019年のものは、トランプが被害女性のことを知っていたと記していたという。
 また、2011年のメールでは、エプスタインがトランプを「まだ吠えていない(動きを見せていない)犬」と表現し、トランプが被害者少女の1人とエプスタインの自宅で「何時間も過ごした」と記述していた部分もあったという。
 民主党議員団はこのようのことをトランプに突きつけ、議会に対して公開を求める採決を行うことを要請した。
 もちろん、トランプはこれまで同様全面否定。「民主党議員団のでっち上げだ」と自身のソーシャルメディアに投稿した。
 ところが、16日になって突然豹変し、「下院共和党議員はエプスタインのファイル公開に賛成票を投じるべきだ。われわれには隠すものはなにもない」と投稿。公開されることは必至となった。
 はたして、全面公開された場合、それでなにが出てくるのか? 現時点では、まったくわからない。トランプの大逆転があるのか、それともレイムダック化が進むのか? 近日、1つの山場を迎えるのは間違いない。(了)

読者のみなさまへ】本コラムに対する問い合わせ、ご意見、ご要望は、
私のメールアドレスまでお寄せください→junpay0801@gmail.com

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

山田順の「週刊 未来地図」その他の記事

山田順プライベートサイト

RELATED POST