2026年1月9日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

山田順の「週刊:未来地図」「資産フライト」(キャピタルフライト)再び。 この予算では円安は止まらない!(完)

「高市円安」の主因は投機ではなく資産フライト

 昨年7月、ドル円は161円を記録してから急反転した。これは、当時の神田真人財務官の適宜な判断で、財務省が円買い介入したからだ。
 2024年7月の記録的円安は、それまで2回、計3回の介入によって反転した。その都度、神田財務官は「投機による為替変動は看過しがたい」という主旨のコメントを発して、ドル買い・円売りを牽制した。
 実際、CFTC(米商品先物取引委員会)の統計を見ると、当時は大幅な円の売り越しが記録されている。
 一般的に投機筋は短期の利益を求めて、金利差や変動幅などを元に為替に投資する。円キャリートレードなどが、その典型だ。しかし、今回の高市円安は、個人や企業の円からドルへの資産フライトが主因で起こっている。投機筋の円売りなら介入で反転可能だが、今回はその効果は薄いのではないか。
 片山さつき財務相は、介入に関して「(選択肢として)当然考えられる」と述べたが、やっても無駄に終わる可能性がある。

持っているだけで目減りする現金と現金預金

 日本では長年、個人金融資産の95%以上が円資産で保有されてきた。しかも、その半分以上は、持っているだけで目減りする現金と現金預金である。2025年3月末時点で日本の個人金融資産残高は2195兆円もある。
 これが、いま大きく動こうとしている。
 私は、『資産フライト』を書いてから4年後、その続編とも言うべき『円安亡国』を書いた。当時、アベノミクスが始まり、日本経済は復活する、「失われた30年」は終わるというムードにあったが、円安が進んでいた。2011年に70円台を記録した円は、120円台になっていた。
 よって、ドルで見れば日本経済は少しもよくなっていなかった。
 それで、私はこの本の最終章に、アベノミクス開始当時の「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」(2013年2月21日)の記事『アベノミクスの効果、円以外の通貨にも波及—ドイツ銀行が予想』を引用した。

「積極財政」をやるなら財源は歳出削減に

 この「WSJ」の記事の取材源は、先に紹介した「ブルームバーグ」の記事と同じ、ドイツ銀行のジョージ・サラベロス氏である。
 彼は、次のように述べている(以下、その要旨)
《日本には15兆ドルの個人金融資産があり、その6割が現預金として眠っている。そして、この銀行預金の大半は、国債に投資されている。しかし、今後、日本のインフレ率が上昇して、現預金の減価が明らかになると、これらの資産は海外資産に向かい出すだろう。
 預金者がその5%をシフトするだけで、4000億ドル以上もの資金が流出する。このインパクトは、主にオーストラリアのような高金利国や新興国に波及するだろう。
 日本人は向こう何年にもわたって、為替相場を動かす可能性がある。ドイツ銀行は、外国為替市場に「30年に1度」のシフトをもたらすと予測している。》
 「積極財政」もいいが、やるなら、その財源を歳出削減に求めるべきだ。議員も官僚も何割かリストラし、給料を引き下げ、政府部門を縮小する。行政法人など無駄な税金を使っている組織を解体・縮小する。それをやらないで、財政規模を拡大するなどしてはいけない。
 このままだと、円安が止まらなくなり、国民は塗炭の苦しみを味わうことになる。

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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