国際的に高く評価される先駆的な映画・ドキュメンタリーの監督、ニューヨーク市長ゾーハン・マムダニの母親
『奇跡のチェックメイトクィーン・オブ・カトゥエ』の後、ナーイルはゾーランに、ミュージカル版『モンスーン・ウェディング』およびテレビドラマ版『適切な花婿』への出演を打診したが、彼は拒んだ。ゾーランは2018年にアメリカ合衆国に帰化し、住宅差し押さえ防止のカウンセラーとして働き、低賃金で暮らす移民の立ち退き防止を支援した。2021〜25年、ゾーランはニューヨーク州議会下院議員として、クイーンズ区のアストリアおよびロングアイランドシティ地区を代表した。21年、クイーンズ選出の新人議員として、彼は市庁舎前で行われたタクシー運転手たちの15日間のハンガーストライキに参加した。これは、メダリオン(営業権)の価格高騰や略奪的貸付によって膨れあがった債務軽減を求めるもので、多くの運転手が自宅や貯蓄を失い、なかには自ら命を絶つ者も出ていた。当時のビル・デブラシオ市長は、債務の上限を17万ドルとし、月々1,100ドルの支払いとする救済策を導入した。新制度では、メダリオン所有者は3万ドルの助成金を受けてローンを再編でき、7.3%以下の固定金利を確保し、市の保証によって債務不履行から保護されることになった。

(Photo: Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/File:Queen_of_Katwe_poster.jpg)
これらの経験が、ゾーランに草の根運動による選挙戦へ挑む原動力を与えた。彼の陣営には3万人のボランティアが参加し、戸別訪問や電話作戦を展開した。公約の中心は、すべてのニューヨーカーにとって「手の届く暮らしやすさ(アフォーダビリティ)」を提供すること。上手く組織されたソーシャルメディア投稿の中には、ナーイル自身が息子への投票を呼びかけながら戸別訪問する姿もあった。彼が選挙活動で訪れた各地区で行きつけのレストランを紹介する投稿も人気を集め、人々に自分とは異なる文化の料理を試してみるよう促していた。市長候補討論会でのパフォーマンスも非常に優れていた。また選挙運動中、彼は「ラーナソン(学びのマラソン)」とも言える姿勢で、将来市長に就任した際に必要となる知識について、話してくれるあらゆる人々から積極的に学んでいた。
優先順位付き投票は、2021年からニューヨーク市で導入された新しい投票方法である。従来のように1人の候補者にのみ投票するのではなく、有権者は最大5人までの候補者を、順位を付けて選ぶことができる。ゾーランは順位選択集計で56.4%を獲得し、勝利に必要な50.68%の過半数を確保した。2026年1月1日、ゾーラン・マムダニはニューヨーク市第112代市長に就任し、市史上最年少の市長となった。34歳にして、彼は世界で最も困難な仕事の一つに挑んでいる。だが、母親が語っているように、彼女もまた30歳で『サラーム・ボンベイ!』を制作した。当時、多くの人々からそれは「不可能だ」と言われていた。
2002年、ナーイルは東アフリカの若手映画作家を支援するため、ウガンダのカンパラを拠点にMaisha Film Lab(「マイシャ」はスワヒリ語で「人生」を意味する)を設立した。ワークショップは無料で提供され、年間10回、4〜6週間のプログラムが実施される。同団体はアクティビズム、代弁・擁護、創造的リーダーシップを推進し、「私たちが自分たちの物語を語らなければ、誰も語ってはくれない」をモットーとする。マイシャの活動は継続的な作品制作を支え、国際映画祭における東アフリカの存在感を高めてきた。ナーイルは2012年、インド大統領より三位の民間勲章パドマ・ブーシャン(蓮華勲章)を授与された。
ナーイルは2018年に「100年にわたって植民地支配を受けてきたインドのような国から来ると、あまりにも長い間、私たちが自分たち以外の他人に私たちのことを語られてきたかに気づきます。それは世界中で起きていることです。今こそ、私たち自身の物語を——私たち自身のやり方で語るべき時なのです」と語っている。「私の映画では、まったく予測不可能な複雑さをもつ私の世界へとあなたを引き込み、そしてあなたが誰であれ、その世界の中に自分自身の姿を見出せるようにすることに焦点を当てています。」(Harper’s Bazaar Nov. 2025)
ナーイルは商業的ヒットよりも、控えめな予算で独立映画を制作する道を選んでいる。現在は、インド近代美術の先駆者であり「インドのフリーダ・カーロ」とも称されるインド=ハンガリー系画家アムリタ・シェール=ギルAmrita Sher-Gil(1913–1941)の生涯を描く新作映画の制作に取り組んでいる。
文/中里 スミ(なかざと・すみ)
アクセサリー・アーティスト。アメリカ生活50年、マンハッタン在住歴38年。東京生まれ、ウェストチェスター育ち。カーネギ・メロン大学美術部入学、英文学部卒業、ピッツバーグ大学大学院東洋学部。 業界を問わず同時通訳と翻訳。現代美術に強い関心をもつ。2012年ビーズ・アクセサリー・スタジオ、TOPPI(突飛)NYCを創立。人類とビーズの歴史は絵画よりも遥かに長い。素材、技術、文化、貿易等によって変化して来たビーズの表現の可能性に注目。ビーズ・アクセサリーの作品を独自の文法と語彙をもつ視覚的言語と思い制作している。
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