ニューヨーク市は8月20日、賃金窃盗(未払い)、入居者への嫌がらせ、移民を狙った詐欺への取り締まりを強化する新たな連携協定を発表した。マンハッタン地区検事局と市消費者・労働者保護局(DCWP)は、捜査に必要な情報やデータ、捜査手法を共有し、必要に応じて刑事手続きと民事手続きを並行して進める。

アメリカのノータリーパブリックは主に署名者の本人確認や署名の証明を行うだけで、原則として法律相談や移民申請の助言はできない(8月24日、ブルックリン・プロスペクトハイツ / photo: 本紙)

「ノタリオ詐欺」を問題視

これまでもDCWPは刑事事件の可能性がある案件を地区検事局へ回してきたが、今後は同じ情報を同時に扱うことで被害回復と責任追及を迅速化する。機密情報の共有は関係法令に従い、両機関はそれぞれの権限と独立性を保つ。

重点対象は、給与を支払わないなどの賃金窃盗や労働搾取、危険な労働環境、立ち退きを迫る家主の嫌がらせ、移民に対する詐欺など。特にアメリカの公証人ノータリーパブリック(Notary Public)などが弁護士を装い、移民手続きの法的助言や申請代行を不正に行う「ノタリオ詐欺」を問題視している。

支払いの遅延や滞納も対象

在米日系企業でも、賃金の支払い遅延や滞納が繰り返される例がある。会社の資金繰りなどを理由に定められた給料日に賃金を支払わない行為は、賃金窃盗として行政処分や民事請求の対象となり、悪質な場合は刑事責任を問われる可能性もある。

保護対象は正社員に限らない。ニューヨーク州ではフリーランスにも報酬の適時支払いを義務付ける法律があり、契約上の期日、または支払日の定めがなければ業務完了後30日以内に支払わなければならない。違反時には未払い額の2倍を請求できる場合もある。

被害に遭ったときの対処法は?

在留邦人が賃金未払いや消費者被害、家主からの嫌がらせなどに遭った場合は、行政相談ダイアル311を通じて担当部署に相談できる。緊急の犯罪被害は911、日本語での情報提供や弁護士探しについては在ニューヨーク日本国総領事館に相談する。ただし、領事館は捜査、民事交渉、代理申請、弁護士業務はできないため、日本語が通じる弁護士の情報提供などが中心となる。

• 賃金未払い、消費者被害、悪質な移民手続き業者→311に電話し「DCWP」と伝える。またはDCWPの公式サイトに申し立てる。

• 家主による嫌がらせ、違法な立ち退き→311に電話し「Tenant Harassment」または「Housing Legal Help」と伝える。

• 詐欺、脅迫、書類の取り上げなど犯罪性がある場合→緊急時は911。緊急でなければ警察または地区検事局へ。マンハッタンの賃金窃盗は、地区検事局の労働者保護部門(646-712-0298)でも受け付けている。