津山恵子のニューヨーク・リポートVol.25
若い人がトランプにシフト
零下9度でも長蛇の列

「トランプは大統領選で勝つ」。予想にはまだ時期尚早だが、そう感じた。初の予備選挙を1月23日に控えたニューハンプシャー州マンチェスターのトランプ集会を目の当たりにした時だ。同氏が2016年、20年に展開したのとは異なる、驚きの戦線光景が広がっていた。集会もボランティアも、大学生など若い人の数が圧倒的に増えていたからだ。
「6対4の割合で、トランプが勝つと思う」。人気の国際政治学者イアン・ブレマー氏が年初の記者会見でこう予言した。集会の現場に行って、彼の予言は私にとってより現実的なものになった。
1月20日午後4時。マンチェスターでこの冬最低の気温で、摂氏マイナス9〜13度。撮影のためにミトンから手を出して、3回ほどシャッターを切ると、手がヒリヒリと痛くなる。メモをとりたくても、ボールペンからインキが出てこない。その中で5時半の開場を待つ人々がすでに1キロちかく並んでいた。最後尾に並ぶが、その後も列は長くなるばかり。
手足も顔も耳もこれが限界だというところで開場。中に入ってびっくりした。私は16年からトランプ集会の取材はこれで7回目だが、以前に比べて若い人が多い。「トランプ支持者は、高齢者」という通念を覆し、ざっとみたところ半分は20〜30代ぐらいだ。アリーナの席は約2500人の支持者であっという間に埋まった。
午後7時10分、まるでビヨンセかテイラー・スウィフトが入ってきたかのような大歓声の中、トランプ氏がステージに上がる。老いも若きも、ステージに背を向けて、一斉にセルフィーを撮り始める。「I love you!!」とでかい女性の声(注:トランプ氏は、ニューヨークの女性をレイプした罪で民事裁判で有罪に)。
トランプの演説は2時間ちかく続いた。足が悪そうな年配者がパラパラと帰ったが、若い人は1人も席を立たない。「WTF」「Crooked Biden」「fake news CNN」といった彼独特の表現に爆笑し、まるでお笑い番組を見ているかのように楽しんでいる。
「アメリカを取り戻したいんだ!」と若い男性が叫んだ。「戦争をしない国」「犯罪が少なくなる」「LGBTQ教育をしない」「国境に壁をつくる」などのフレーズに、歓声や口笛が響き、一斉に立ち上がる。
集会に先立って訪れた選対本部も、若い人が半分ぐらい占めていた。立ったままでスマホで有権者に電話し、投票を促していた。
ただ、笑えたのは、トランプを待つ間、大音響でかかる音楽が16、20年と変わらず、若い人向けにアップデートされていなかったことだ。オペラ「トゥーランドット」の「誰も寝てはならぬ」は定番。ジョニー・キャッシュ、エルビス・プレスリー、エルトン・ジョンと続き、トランプが登場する直前の盛り上げソングは「Y.M.C.A」(1978年)だった。(写真と文、津山恵子)

津山恵子 プロフィール
ジャーナリスト。ザッカーバーグ・フェイスブックCEOやマララさんに単独インタビューし、アエラなどに執筆。共編著に「現代アメリカ政治とメディア」。長崎市平和特派員。元共同通信社記者。
RECOMMENDED
-

客室乗務員が教える「本当に快適な座席」とは? プロが選ぶベストシートの理由
-

NYの「1日の生活費」が桁違い、普通に過ごして7万円…ローカル住人が検証
-

ベテラン客室乗務員が教える「機内での迷惑行為」、食事サービス中のヘッドホンにも注意?
-

パスポートは必ず手元に、飛行機の旅で「意外と多い落とし穴」をチェック
-

日本帰省マストバイ!NY在住者が選んだ「食品土産まとめ」、ご当地&調味料が人気
-

機内配布のブランケットは不衛生かも…キレイなものとの「見分け方」は? 客室乗務員はマイ毛布持参をおすすめ
-

白づくめの4000人がNYに集結、世界を席巻する「謎のピクニック」を知ってる?
-

長距離フライト、いつトイレに行くのがベスト? 客室乗務員がすすめる最適なタイミング
-

機内Wi-Fiが最も速い航空会社はどこ? 1位は「ハワイアン航空」、JALとANAは?
-

「安い日本」はもう終わり? 外国人観光客に迫る値上げラッシュ、テーマパークや富士山まで








