2025年8月8日 NEWS DAILY CONTENTS COLUMN 津山恵子のニューヨーク・リポート

津山恵子のニューヨーク・リポートVol.61 「AIに奪われる職種」トップ10とは、若者が狙う安全圏はブルーカラー

AI(人工知能)に最も奪われやすい職業は「翻訳家・通訳」、最も奪われにくい職業は「フレボトミスト(採血専門の医療従事者)」。米マイクロソフトが最新の報告書で明らかにした。AIに脅かされる職種がホワイトカラーに多かったのに対し、AIには取って代われないのはブルーカラー職が目立った。過去数十年間、賃金格差やレイオフ、コンピューター化などにさいなまされたブルーカラーだが、「復活の時」が来たのかもしれない。

1920年代築のアパート階段を修理する左官職人は、当面AIに侵食されにくい職にある
(7日、クイーンズ Photo: Keiko Tsuyama)

奪われやすい職業、つまりAIの「適用可能性」が高い職のトップ10は、翻訳家・通訳、歴史家、(交通機関・駅の)アテンダント、店員、ライター・執筆家、カスタマーサービス、コンピュータ数値制御(CNC)ツールプログラマー、電話オペレーター、チケット売り・旅行サービス、アナウンサー・ラジオDJ。

一方、奪われにくいトップ10は、フレボトミスト、看護士、有害廃棄物処理作業員、しっくい職人・塗装工、遺体防腐処理者、工場システムオペレーター、車両ガラス取り付け・修理業、船舶エンジニア、タイヤ修理・交換業。20位以内には皿洗い、セメント職人が入る。フレボトミストは、日本にはない職種だが、アメリカでは専門職だという。小児喘息で体が弱かった私は、当時の日本の看護士が一発で静脈に採血の注射針を刺すのを感嘆の目でみていた。そういうワザがAIにはできないのだろう。

報告書名は「AIと働く:生成AIの職業への影響を測定する」。研究者が2024年1〜9月、マイクロソフトのチャットボット「Bing Copilot」と米ユーザーが交わした会話データ20万件を分析した。匿名でプライバシー保護処理済みのデータを利用している。さらに「AI適用可能性スコア」という指標を開発し、特定の職業がAIをどの程度活用できるのか、あるいは活用しにくいのかを数値化した。例えば、翻訳家・通訳のスコアは0.49で、フレボトミストは0.03となる。

ユーザーがAIを使う際、「AIが最も頻繁に行っているのは、情報提供と支援、執筆、教育、助言」と研究者は説明。それらに関わる職種がAIで自動化され、賃金カット、リストラにつながる可能性があるという。

私の近所の若者はこういう傾向に敏感だ。大学を出ていても、AIに奪われない職業に就こうと、職業訓練校などに行ったりする。

ちなみに、「記者・ジャーナリスト」である私は、16番目にAIに侵食される職業。しかし、トランプ氏の選挙集会や記者会見、事件現場に足を運ぶ限り、しばらくは無事だろう。五感を働かせた記事が書けるからだ。とはいえ、現場に来られるAIロボットが登場するのは時間の問題だろう。

一方で、新型コロナによるシャットダウン最中のエッセンシャル・ワーカーを含め、ブルーカラーが生き残れる時代が来るようだ。彼らの評価が上がるチャンスが訪れる。マイクロソフトの報告書はこちら

文・写真/津山恵子 

津山恵子 プロフィール
ジャーナリスト。専修大文学部「ウェブジャーナリズム論」講師。ザッカーバーグ・フェイスブックCEOやマララさんに単独インタビューし、アエラなどに執筆。共編著に「現代アメリカ政治とメディア」。長崎市平和特派員。元共同通信社記者。

RELATED POST