ミシシッピ州には公民権運動の記念となる場所を辿る「ミシシッピ・フリーダム・トレイル」がある。ニュージャージー州アトランティックシティーが州外で初めて、その1つに認定された。20日付けのニューヨークタイムズによれば、記念碑が建立され、式典が行われる。

ミシシッピ州マニーに設置されたフリーダムトレイルの記念碑。
アトランティックシティの記念碑も同様のデザイン
photo: Eames Heard
イリノイ州シカゴ市では今週、民主党の全国大会が開催されているが、60年前、民主党が全国大会を行ったのがニュージャージー州アトランティックシティ。公民権運動が高まりを見せ、「フリーダムサマー」と呼ばれた1964年の夏、ミシシッピ州から黒人運動家たちがバスに乗ってこの大会に参加した。
その1人、ファニー・ルー・ハマーさんは、有権者登録をして嫌がらせを受けたり、他人に有権者登録を勧めて投獄され酷い仕打ちを受けたりしたと演説。「これがアメリカだろうか」と訴えた。それを聞いていたジョンソン大統領(当時)は激しく感動し翌年、投票時の人種差別を禁止する「投票権法」に署名。まさに歴史を変えた大会となった。
ハマーさんはミシシッピデルタの生まれ。兄弟20人のうちの末っ子で、6歳から農作業に従事し、40歳代の後半から公民権運動に加わった。アトランティックシティの演説の後、ニューヨークのハーレムでも演説。1977年に亡くなっている。
式典に参加するミシシッピ州人権委員会のスティワート・ロックオフ委員長は、この記念碑は「過去の事実をうそ偽りなく物語る」として「忘れられた歴史を学んでほしい」と、また、党大会に参加したというデービッド・デニスさん(84)も「人種を問わず、我々は結束して『この国をどのような国にしたいのか』を話し合わなければならない」と話す。
分断が深まる米国。その根底には常に人種差別と貧富の差がある。公民権運動の歴史に触れるアトランティックシティの記念碑は、こんな今だからこそ意味があるといえよう。
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