関税男“タリフマン”を自称するトランプは、BRICSが共通通貨をつくろうとする動きを牽制して基軸通貨のドルを守るとともに、FRB(連邦準備制度理事会)に対しては金利の引き下げを要求している。さらに、FRBの解体まで言い出している。
いったい、トランプはなにを考えているのか? そして、 ドルは今後どうなるのか?
前編ではドルを発行するFRBが、いかにして世界金融を支配しているのかを考察した。今回の後編は、その続きである。
なお現在の状況では、ドル基軸体制は揺るぎそうもない。
トランプが望む金利引き下げは逆効果か?
トランプは、ドルによるアメリカの世界覇権の強化を望んでいる。そうしながら、金利を下げてドル安に誘導し、それによる輸出増が貿易赤字を減らすことを望んでいる。また、金利を下げれば景気はよくなると思い込んでいる。
昨年、2024年、FRBは年6回の利下げをすると市場は予測した。ところが実際は昨年9月からの3回連続、全体で1.0%の利下げにとどまり、ドル高は維持された。だから、トランプはなんとしても金利を下げたい。
しかし、FRBは、1月28、29日のFOMC(Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)で、金利の据え置きを決めた。パウエル議長は、政府の圧力より、通貨の番人としての役割を重視したのだ。
トランプは早速、FRBを批判した。
「(FRBは)高インフレを防げず、これまでひどい仕事をしてきた」
金利が思うままにできないので、トランプは関税を武器になりふり構わない貿易戦争を仕掛ける手に打って出ている。
しかし、高関税は輸入品の価格を上昇させ、さらなるインフレを招く。そうなればFRBは再び利上げをせざるを得なくなる。となると、結果的にドル高になる。
トランプの願いと手段は相反していると言えるだろう。
所得税が導入された年に創設されたFRB
では、FRBとはどんな機関なのか、ここからは、その成立過程から考察してみたい。
前編の繰り返しになるが、FRBは、中央銀行と言っても銀行(バンク)ではなく理事会(ボード)であり、実際に中央銀行の役目をしているのは、傘下の12の地区の連邦準備銀行(Federal Reserve Banks)である。その中でもニューヨーク連銀が筆頭で、ドル紙幣の発行を行っている。
つまり、FRB自体は金融システム(=制度)であり、全体としてFRS(Federal Reserve System:連邦準備制度)と呼ばれている。
このようにFRBはドル経済の総本山であるが、それにもかかわらず、アメリカ政府はFRBの株式を持っていない。また、決算は非公開である。
通貨を発行する場合、当然だが発行利益が入る。その利益は莫大だが、それがいったいくらかはまったくわからないのだ。
FRBが創設されたのは、それほど昔のことではない。1913年のことで、この年に、アメリカでは所得税の導入が決まっている。それまでアメリカには、所得税がなかった。南北戦争時に一時的に徴収されたものの、憲法違反ということで廃止され、1913年まで所得税はなかったのである。
この所得税の徴収を可能とする第16次憲法修正法案の成立と、FRBの創設が同じ年だということは偶然の一致ではない。
ユダヤの国際金融資本がFRBをつくった
この世に陰謀論は山ほどあるが、「国際金融資本」(ロスチャイルド家など)が世界の金融を支配しているという見方は、FRSの成立過程を見ると、あながち間違っているとは言えない。
FRBは、1913年のクリスマス前の12月23日、欧州のロスチャイルド家、アメリカのロックフェラー家、モルガン家(ロスチャイルドの代理人)などの息のかかった議員によって成立した。
彼らは、モルガン家が所有する南部ジョージア州のジキル島で、極秘会談を重ね、FRBの骨子を決めたのである。
ジキル島での会議の存在は、FRB創立後、約20年間も秘せられた。FRB設立に大手金融資本が関与していたことが表沙汰になると、ドルに対する不信感が生まれるからだ。しかし、いまでは、こんなことは投資家の常識である。
FRBの中心ニューヨーク連銀の出資者は、ファースト・ナショナルバンク・オブ・ニューヨーク、ナショナル・シティバンク・オブ・ニューヨーク、ナショナルバンク・オブ・コマースなどで、これらの銀行の株主は、いずれもユダヤ資本だった。
その名を記すと、ロスチャイルド銀行(ロンドン、ベルリン)、ウォーバーグ銀行(アムステルダム、ハンブルグ)、リーマン・ブラザーズ(NY)、ゴルドマンサックス(NY)、チェース・マンハッタン(NY)などだから、結局のところ、FRBはユダヤの国際資本によってつくられたということになる。
この続きは3月20日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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