ニューヨーク市で4万6800人以上の犠牲者を出した新型コロナウイルスのパンデミック。5年を経た今、ニューヨークはどのように変貌したのか?13日付ニューヨークタイムズが検証している。

人口と新生児が減少、移民が人口減少に歯止め
2020年〜23年にかけて約35万人が市を離れたが、2023年以降、人口は徐々に回復。しかし、富裕層は戻ったものの、子育て世帯や黒人住民の流出は続いている。21、22年の新生児は9万9000人で、これは1890年代後半以降、1936年の大恐慌時を除いて最低。23万人以上の移民が市の人口減少に歯止めをかけるのに役立っている。
雇用は回復したが賃金格差は拡大、貧困が深刻化
23年秋には民間雇用が完全に回復したが、新たな雇用の多くは低賃金職であり、特にホームヘルスケア業界の成長が著しい。パンデミック以降、賃金が急上昇したというがその大部分は金融、テクノロジー、情報などの分野の高所得者。一方で、建設業や小売業など中所得層の職は減少し、所得格差が広がっている。23年には、200万人以上が生活必需品を購入できないほどの貧困状態に。これは15年以来最悪の水準だ。
家賃は高騰、庶民の生活を圧迫
およそ63万世帯が、収入の半分以上を家賃に費やしている。2月のアパートの平均募集価格は月額3645ドルで、コロナ前より25%以上上昇。特に低所得層への影響が大きく、市の住宅補助予算も急増。マンハッタンのオフィス空室率は過去25年間で最も高く、企業は在宅勤務の影響でオフィススペースを縮小している。
観光業は回復傾向だがホテル代は高騰
24年の観光客は6400万人以上。これは過去3番目に多い数字だが、中国人観光客はコロナ前と比べて半減。市の昨年のホテル平均宿泊料金は314ドルで、19年から28%上昇。
飲食業は復活、小売業は苦戦
小売業はオンライン販売の拡大や在宅勤務の影響で数百店舗が姿を消した。24年11月のチェーン店舗数は19年末よりも1225店舗減少しており、15%以上の減少。20〜24年第3四半期にかけて、市ではほぼ全ての業種の店舗で開店数よりも閉店数の方が多くなっている。市全体の空室率の低下を牽引したのはレストランで、2000〜23年、レストラン数はほぼ倍増し、2万1170軒を超えた。それに伴いデリバリー業も急成長、最低賃金の引き上げが実現するなど労働環境に変化が出ている。
編集部のつぶやき
ニュースクール大学ニューヨーク市問題研究センターのデータによれば、昨年31万2000ドル以上の収入を得た高収入労働者は2019年以降、平均時給が4倍の速さで伸びているそうです。同センターのエコノミスト、モハメド・オバイディさんは「上位3%の人々にとって、コロナ後は黄金時代だ」と述べています(NYTの記事から引用)。結局、“得したのはお金持ちだけ”ってことですね。(A.K.)
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