2025年6月5日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

山田順の「週刊:未来地図」 中国に屈服したうえ債務の上限が迫る。このままでは、株価大暴落によるバブル崩壊か!(完)

債務上限の解決策として浮上の「永久国債」

 トランプの“関税愚策”で、ドルの価値が低下し、アメリカ覇権が後退していくのを見ながら。プーチンはじめ反米国家のリーダーたちは、「ザマあ見ろ」と思っているだろう。
 世界の多くの専門家も、「アメリカ1極時代の終焉」とか「多極化」とか言いまくっているが、トランプ以後のアメリカのリーダーが間違わない限り、本当の「MAGA」(偉大なる復活)はありえる。ドル覇権も続く。ただし、さすがに債務の上限問題は乗り切らなければならない。
 一部報道では、アメリカ政府内部では債務の上限問題の解決策として、「永久国債」(perpetual bond)の発行が検討されているという。償還期限がなく、政府は利子だけを払えばいいという国債で、かつて、英国での成功例がある。
 富裕層に富裕税をかけるなら、永久国債を買わせて、利子だけを払い続けるというのは「妙案」である。じつは、債務が際限なく増え続ける日本でも、これは検討されたことがある。
 しかし、ドル債ではない円債では誰も買わないだろう。
 それにしても、日本ではアメリカ以上にGDP比債務が膨らんでいるというのに、「国債は無限に発行可能」「財政破綻はあり得ない」などと言っている輩、政治家がいる。まったく、どうかしているとしか思えない。

大恐慌時、NYダウはなんと10分の1に

 いずれにしても、トランプによってアメリカ経済は後退局面に入った。この先、さらに落ち込むのは確実だ。
 ここで、関税の嵐が吹き荒れた「大恐慌時代」を振り返ってみたい。暴落の始まりとなった1929年の「暗黒の木曜日」から1932年の3年後の底入れまで、NYダウは最高値の381ドルから41ドルまで下落した。なんと、NYダウは約10分の1になってしまったのである。
 NYダウは、2024年末に4万5000ドルという史上最高値を記録した。それから、トランプ第2期政権になった後どうなったか? 
 紆余曲折はあったが、現在(5月12日)、まだ4万2000ドル台にある。
 約半世紀前といまでは、世界経済の環境も規模も大きく違っている。しかし、人間の欲望の現れである相場というものは、いまも昔も変わらない。とすれば、大恐慌当時と同じ暴落がやって来てもなんら不思議ではない。

ドルを軽視しビットコインを重視のなぜ?

 最後に、ずっと気になってきことを書いて終わりにする。それは、なぜトランプが、これまで暗号資産(仮想通貨:クリプトカレンシー)、とくにビットコインを「素晴らしい」と称賛してきたかかだ。“化石アタマ”のトランプが、最新のデジタル資産クリプトカレンシーを理解しているとは、とても思えないからだ。
 しかし、その答えは単純だ。WSJ紙の記事「トランプファミリー、ビットコインマイニングに参入」(3月31日)によると、ビットコインのマイニングマシンを管理するベンチャー企業「アメリカン・ビットコイン」(American Bitcoin)は、トランプの次男エリック・トランプを最高戦略責任者として迎え、「ビットコイン準備金」の構築を計画しているというのだ。
 要するに、トランプ一族はビットコインのマイニング事業に参入し、金儲けをしようとしているのである。
 5月13日に「コインデスク・ジャパン」は、『トランプ一家が支援するアメリカン・ビットコイン、グリフォン・デジタルと合併で上場へ』という記事を配信した。
 その内容は、トランプ一家が支援し、「ハット8」(Hut 8)が過半数の株式を保有する子会社「アメリカン・ビットコイン」は、「グリフォン・デジタル・マイニング」(Gryphon Digital Mining)との合併により上場する。噂によると、アメリカン・ビットコインのマイニングのコストの低さは、驚くほど安いという。
 私は、ビットコインのようなクリプトカレンシーが、法定通貨と肩を並べる日は来ないと思っている。しかし、トランプ一族は、それを狙っているのではないか?
 トランプは、ことあるごとにFRBを攻撃し、ドル安発言を繰り返している。

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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