100万ドル夕食会出席で見返りに即恩赦
先の「ビットコイン・カンファレンス」の1週間前、トランプは自身のミームコインの最大購入者たちを自身が所有するワシントンDC郊外のゴルフ場に招いて夕食会を開催した。これだけでも、利益相反だが、夕食会の出席者の中には、多くのビットコインビジネスの関係者、ビックテック業界の有名人などがいた。
この夕食会の詳細は「WIRED」が伝えているが、トランプはこうした夕食会を何度か行っている。
例えば、資金集めのための「マール・アラーゴ」の夕食会の場合、出席者は、グループ会食には100万ドル、大統領との1対1の対面会食には500万ドルを払う。そうして、トランプと話し、なんらかの見返りを受け取るのだ。
「ニューヨーク・タイムズ」は5月27日、「マール・アラーゴ」の夕食会に出席した母親の息子が、その後、恩赦を受けたと報道した。この息子は、フロリダ州で医療保険会社を経営しており、医師、看護師ら従業員から源泉徴収した所得税や社会保険料など計1000万ドル以上を2011年以降納付しなかった脱税などの罪で2023年2月に訴追され、今年の4月11日に禁錮1年6月の実刑判決を言い渡されていた。
ところが、100万ドルで母親が夕食会に出席後、すぐに恩赦を受けたのだという。こうなると、ミームコインも夕食会の会費も明らかな賄賂だ。
トランプになって、アメリカはカネでなんでもできる「富裕層天国」に変わってしまったのだ。
ウクライナは放り投げ、儲かる中東で利権漁り
「トランプには思想などはない。すぐにころころと立場を変える。幾度も民主党と共和党を行き来したのが、その証左だ」と、第1次政権時の安全保障政策担当大統領補佐官ジョン・ボルトンはメディアに言った。
まさにその通りだが、トランプがころころと立場を変えるのは、カネになるかならないかが最大のポイントで、あとは気分次第。記憶障害の可能性もあって、過去に言ったことを忘れてしまうのだ。
ウクライナ戦争の和平交渉も、レアアースに固執したのは、カネになるかならないかがポイントだった。しかし、採掘に何年もかかるとなるとわかると、ウクライナと利権獲得の合意に達したにもかかわらず、和平は放り投げた。
しかし、中東歴訪では、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)との間で、総額2兆ドルの投資案件をまとめ、これにファミリー企業(トランプ・オーガニゼーション)を絡ませて、まさにトランプの真骨頂が発揮された。
なにしろ、カタールでは同国初の高級ゴルフリゾートが、UAEのドバイでは、地上350メートル、80階建てのトランプタワーが建設されるのだ。ちなみに、トランプ・オーガニゼーションは、大統領になる以前はトランプの会社だったが、いまは、長男のジュニアと次男エリックに任せている。
とうとう携帯電話サービスにまで参入
それにしても、トランプの利益相反は臆面もない。
なんと、6月17日、トランプ・オーガニゼーションは、モバイルサービスを始めることを表明した。「トランプ・モバイル」で携帯電話サービスを立ち上げ、アメリカ製のスマホを販売するというのだ。
通信回線はベライゾンやAT&Tなどの大手の回線を使い、通話やテキストメッセージ、データの送受信は無制限で遠隔医療を受診できる特典が付き。料金は月額でトランプが第45代と第47代の大統領であることにちなみ47.45ドル。金ピカ大好きのトランプにちなんだゴールドカラーのスマホは、8月に499ドルで売り出されるという。
もうこうなると、利益相反というより、大統領ブランドを利用した独占ビジネスで、独裁国家の独裁者が国と自分を一体化させてカネを懐に入れているのと同じレベルである。アメリカはトランプによって、本当に変わってしまった。
*続編の(2)は来週、配信します。
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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