■最近注目されている「気象制御技術」への投資
このような状況にあっても、希望はある。
それは、投資家や起業家たちが、温暖化対策に真剣に取り組んでいるからだ。投資家や起業家たちが真剣なのは、温暖化(気候変動)対策こそが次のビジネスの主流であり、それが最大のリターンをもたらすと信じているからだ。温暖化対策と並んで、次のビジネスの最大のテーマは人工知能である。
すなわち、温暖化=気候=Climateの「C」と人工知能=Artificial Intelligenceの「AI」が、今後のキーワードである。
では、温暖化対策ビジネスとは具体的になにか?それは、テクノロジー面から見ると、「CO2排出削減技術」(省エネ技術、CCUS:CO2回収・利用・貯留技術)と「CO2除去技術」(直接空気回:DAC)技術や人工光合成技術の2つだ。
これに加えて、最近注目されているが、「気象制御技術」(weather control technology)である。
SF映画『ジオストーム』では、宇宙から地球上の気象をコントロールするシステムが登場する。それがどんなものかは映画だからわからないが、それを開発、実用化しようという研究開発はいま、アメリカを中心に進んでいる。いくつかのスタートアップが、それに取り組んでおり、中には投資家から1億ドルを超える資金を集めているところもある。
■降雨、落雷、ハリケーンの進路などを制御する
気象制御と言うと、真っ先に思い出すのが、2008年の北京オリンピックの際に、中国政府が人口的に雨を降らせて、北京のオリンピック会場での降雨を防いだことだ。
これは、北京に近づく雨雲に小型ロケットを1000発ほど打ち上げ、ヨウ化銀を散布することで達成した。ヨウ化銀は、雲の中の水蒸気と化学反応を起こす。そのため、雨雲が北京の会場に近づく前に、雨を降らせてしまったのである。
この技術が確立されれば、雨をコントロールして、雨による被害を防ぐことが可能になる。
気象制御の技術は、降雨だけではない。強制的に雷を落とす技術も開発されている。「ロケット誘雷」という技術で、ワイヤーにつないだロケットを雷雲に向けて打ち上げて避雷針のように機能させ、雷を落とすというものだ。
また、もっと大規模な気候制御として、台風やハリケーンの進路を変えさせることも可能になってきている。この研究は、アメリカでは何年も前から進んでおり、最近ではAIを駆使したスタートアップが取り組んでいる。
■CO2除去、人工光合成などはまだ研究開発段階
これらの竜巻や台風の被害を制御するというのは、地球温暖化と言う大きな枠組みから言うと、ディフェンシブ(防御的)である。しかし、いま進む気候変動による災害多発に対しては、即効果があるし、技術的には前記した「CO2排出削減技術」「CO2除去技術」に比べると、実現可能性が高く、もう一歩のところまできている。
たとえば、大気中のCO2を分離・回収するDAC(直接空気回収技術)は、気候変動対策と将来の資源確保の両面で大いに注目されているが、まだまだ研究開発段階だ。しかも、大規模な投資が必要とされる。
2050カーボンニュートラルまでに間に合うかどうかだという。
ちなみに、現在。世界には150近いDAC企業があるが、半数はアメリカ企業。日本企業でDAC開発を行なっているのは、川崎重工、本田技研など数社だ。
また、同じように注目される「人工光合成」は、太陽エネルギーを使って酸素や水素、そして化学原料の生成までを目指す技術だが、まだ、基礎研究の段階である。
いずれにしても、トランプがいなくなれば、世界は温暖化対策に邁進しなければならなくなる。そうしなければ、人類は半世紀以内に生存の危機に晒される。はたして、国際社会はどういう方向に向かうのか?
いつまでも戦争やテロをやり、領土を奪い合ったりするほど、人類はバカではないだろう。そう信じたい。(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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