NYの大人が楽しむ「ピクニック」が大盛り上がり、毎年4000人以上が集う “ドレスコード” 付きの魅惑イベントに潜入

ニューヨークのバッテリーパークで開催された 2025年度「Diner en Blanc」より(photo: Jane Kratochvil)
9月末のニューヨーク、一風変わったイベントが開催された。ドレスコードは頭からつま先まで白オンリーで、食事、そして椅子や机までも各自で持っていくピクニック。今回は、4000人以上の人が集った、ちょっぴり変わった「Diner en Blanc(ディネ・アン・ブラン)」を現場レポートと写真でお届けする。

◆ 始まったのは「パリの公園」
パリで1988年に始まったのち、ニューヨークでは2011年にスタートした同イベント。イベントの概要やルールはいたってシンプルで「白でコーディネートをまとめてください(オフホワイトやベージュはNG)」そして「食事や机、椅子など必要なものは各自持ってきてください」というもの。

一見、「手ぶらで行けないイベントなんて」と思うかもしれないが、実は毎年10万人以上がウェイトリストで待機しており、枠が開放されると早いもの勝ちで埋まっていく、根強いファンから支持されるイベントなのだ。それに参加者の70%がリピーターというから驚きだ。
人々はなぜこのイベントに惹かれるのか? 理由を探るため、現地に潜入取材を行うことにした(もちろん全身白を身に纏って)。
◆ いざ潜入!会場周辺からすでに白い…
当日の夕方17時。開催場所が直前までシークレットなため、イベント開始の約2時間前に参加者に一斉にショートメールが送られてくる。「今日の開催はバッテリーパークで、最寄駅は〜、電車でのアクセスは〜が1番最適です。そして会場の近くには旗を持ったスタッフが立っているので、各自与えられた番号のスタッフに着いて行ってください」

会場の最寄り駅に着くと、あちらこちらに白をまとった参加者たちが立っている。そして旗を持ったスタッフを見つけると、そこには何やら楽しそうに会場に向かう大人たちを発見した。
本場エンターテインメントの街・ニューヨークとはいえど、ハロウィンでもない平日に、同じ色の服を着た陽気な大人たちがぞろぞろと同じ会場に向かって歩いているのは面白すぎる。イベントが始まる前から、すでに “普通のピクニックではない” ことが分かった。

そしてついに会場入り。編集部が到着したのがちょうど日の入り直前、そして会場がマンハッタンの摩天楼を見渡せる公園「バッテリーパーク」ということもあり、ワイングラスを持った白い大人たちが夕陽に照らされ、会場入り口にはサーカス風なパフォーマーたちが幻想的なパフォーマンスを繰り広げている。映画「ミッドサマー」の世界に迷い込んだかのような、現実離れした異世界がそこには広がっていた。

会場を進んでいくと、そこには無数のテーブルが所狭しと並び、テーブルにはそれぞれが持ち寄った自前のピクニックメニューがずらり。フードに合うように、また陽が落ちてもピクニックを楽しめるようにと、どのグループも電飾などの装飾を煌びやかに彩っていたのが印象的だった。

◆ これが究極のデジタルデトックス?
知らない人たちが、同じ空間で、同じ色の服を着て、ただピクニックをする。これだけなのに、会場にいた参加者みんなが満ち溢れた笑顔で友人や家族とのひと時を過ごしていた。国籍や年齢層も30代〜70代とそれぞれ。
当日を迎えるまでは「写真映えのため」の人たちが集まるのだろうか、と考えていたが広がっていた景色は全く逆だった。もちろん持ってきた料理やアウトフィットを収めようとカメラを手にしている人はいるが、大半の人はスマホやデジタルデバイスを手放し、その瞬間を楽しんでいた。
究極のデジタルデトックスを、ファッションや友人、そして音楽など “ニューヨークらしい方法で楽しむ”。陽が完全に落ちると、食事を終えた人々は次第に海辺の方に集まり、DJブースを囲むようにしてダンスパーティーが始まった。

老若男女が音楽に身を任せ、ニューヨークの夜風に吹かれながら踊る。DJブース横目に海辺で佇んでいた60代の男女に話を聞いてみた。
「ドイツからこのイベントのために来た。ニューヨークが好きだし、何よりこのイベントが楽しみで毎年来ているの。だからこうしてファッションも工夫を重ねて電飾を付けたりしちゃったり(笑)これだけの人と同じ時間を共有できるこの空間は素晴らしいと思うし、また来年もきっと来ると思う」
本来、食事やイベントというのは人と集い、その時間を共有するためにあるもの。デジタル化や効率化が進んだ今、純粋に「人と楽しむこと」が少し難しくなっているのかもしれない。だからこうして、本来あるべき “繋がり” を感じられる場所に人々は集まる。Z世代などの若い層が少なく、熟年層が多かったのにも納得ができる。

「人と人が、ただ一緒にごはんを食べる。テクノロジーや忙しさから少し離れて誰かと繋がる。そんなシンプルな喜びを求めて、人々は足を運んでくれるのです」ニューヨーク開催の仕掛け人であるサンディ・サフィ(Sandy Safi)さんは開催前のインタビューでこう語っていたが、まさにそのままの景色が広がっていた。
筆者も来年は取材ではなく、椅子とテーブル、そして手作りのフード、時間を共にしたい友人たちを誘って参加してみようと思った。忘れかけていた「シンプルな喜び」を最高の形で感じられるイベントに出逢ってしまった。
取材・文/ナガタミユ
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