トランプ政権は、アメリカのパスポートに記載される性別を出生証明書と一致させる新方針を発表した。これは、性自認に基づく性別表記の変更を認めてきた国務省の数十年にわたる運用を覆すものだ。ニューヨークタイムズが17日、伝えた。

アメリカのパスポートに性別欄が設けられたのは1970年代。90年代以降、国務省は手術の証拠や医師の証明書を提示した申請者の性別変更を認め、2010年には手術不要の証明書方式に移行。最終的には自己申告方式が導入され、21年には男性・女性のいずれでもない退役軍人に初となる「X」表記のパスポートが発行された。バイデン政権下では翌年、申請者が「M」「F」「X」から選択できる体制が整えられた。
しかし新方針では、今後のパスポートは性自認にかかわらず出生時の性別を反映し、「X」表記も廃止となる。今年初めに連邦判事が施行を差し止めたものの、最高裁が政権側の申し立てを認めた(註参照)ことで、法廷闘争が続く中でも施行が可能となった。なお、既存のパスポートは有効期限まで使用できるとされる。
世論調査によれば、多くのアメリカ人はトランスジェンダーの人々を差別から保護したいと考える一方で、社会の配慮が行き過ぎているとも感じている。ギャラップ調査では、約3分の2の回答者が「政府文書は性自認ではなく出生時の性別を記載すべき」と回答していた。
批判派は、同政策を性自認を「存在しないもの」と位置付ける国家の公式見解に等しいと受け止めている。特に海外渡航者からは「パスポートを提示するたびにカミングアウトを強いられる」との声が上がる他、推定300万人のトランスジェンダーおよびノンバイナリーのアメリカ人に日常的な支障が及ぶとの懸念も広がる。外見とパスポートの性別が一致しない場合、海外渡航、銀行手続き、就職などで誤解や虚偽表示の疑いを招く可能性が指摘されている。
性自認に基づくパスポート表記を認めている国には、カナダ、ニュージーランド、ドイツ、デンマーク、インド、ネパール、バングラデシュ、マルタなどがある。
註:最高裁の見解
米最高裁(保守派4人、リベラル派3人で構成)は「出生時の性を表示することは、出生国を表示するのと同様に平等保護の原則に反するものではない」と指摘、差別的な扱いには該当しない」との見解を示した。一方、リベラル派判事3人全員が政権側の申し立てに反対。その一人であるケタンジ・ブラウン・ジャクソン判事は「トランスジェンダーのアメリカ人が、自身の性自認に合ったパスポートを取得できないようにすることで、政府は単にトランスジェンダーの存在は『偽りである』との信念を表明しているだけない。この政策は原告たちが経験してきたような詮索や、ときに屈辱的な好奇の目を招くものでもある」と主張した。
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