テイクアウト時のチップ、NYでは払う？ 払わない？ 街の声を集めてみた

レジで支払いをするとき、テイクアウトであっても当たり前のように表示されるチップ選択画面。
「0%」を押すことに、なぜか一瞬ためらいを覚える。こうした違和感を抱く人は少なくないだろう。

DAILYSUN NEW YORK が日本人在住者を対象にしたアンケート調査に加え、さらに現地のニューヨーカーへの聞き取り調査を行い、テイクアウト時のチップを巡る実態を調査してみた。

飲食店のテイクアウト時にチップを払っているか
NY在住の日本人は？

まず、日本人在住者を対象にインスタグラムを通じて実施したアンケート結果から見ていく。

「飲食店のテイクアウト時にチップを払っているか」という質問に対し、回答数557件のうち、最も多かったのは「チップは払わない」で346人（62%）。

「店内飲食と同程度（18〜22%）払う」と答えた人は21人（4%）、「店内飲食時より少なめに払う」は73人（13%）にとどまった。テーブルでの接客サービスを受けていないテイクアウトでは、「チップは不要」と考える人が多数派であることが数字からも明確に読み取れる。しかし、チップを「何らかの形で支払っている」と答えた人が94人（17%）にのぼった点は、注目に値する。今回は日本人に行ったアンケートだったため、パネルタッチの“圧”に負けやすいのでは、と思いニューヨーク在住の日本人以外の人にも聞き込み調査を実施した。

日本人以外のNY在住者の反応：「本来は払わない」

日本人以外のニューヨーク在住者計25人（20〜50代の男女、学生、会社員、育児中の人など）に聞き取り調査を実施した。

その結果、テイクアウト時にチップを「払う」と答えたのは4人（16%）、「たまに払う」と答えたのは1人（4%）にとどまった。残る20人（80%）は、「テーブルサービスを受けていないテイクアウトでは、チップを払う必要はない」と、はっきりと答えた。

一方で、払うと答えた人からは、「スタッフの対応が特によかったとき」や「個人的に感謝を伝えたいと思ったとき」など、あくまで好意ベースであることが明した。その場合も、現金でチップボックスに入れることが多く、金額の目安は10〜15%程度だった。

ファストフード店での店内飲食についても同様に聞いたところ、25人中チップを払うと答えたのは3人（12％）だった。その場合も、タッチパネルで選ぶのではなく「テーブルまで料理を運んでくれた場合に、現金で2〜5ドルを渡す」といったものだった。

特に20代を中心とした若い世代では、「テーブルサービスがない限り、チップは払わない」との認識がより明確な傾向が見られた。一方で、「デート中で、見栄を張りたくて払ったことがある」といった率直な意見もあり、チップが社会的・心理的な要素と結びついている側面もうかがえる。

広がる“タッチパネル疲れ”

多くの人が挙げたのが、レジに設置されたタッチパネル式の決済画面だ。テイクアウトであってもチップの選択を求められることに対し、「心理的な圧を感じる」「断りにくい」といった声は、日本人、ニューヨーカーの双方から聞かれた。

こうした感覚は、ニューヨークに限ったものではない。米個人金融サイトBankrateが2025年に実施した調査によると、アメリカ人の63%が現在のチップ文化に否定的な印象を持ち、41%が「チップ文化が行き過ぎていると感じている」と回答している。

また、約6割が、事前に金額が設定されたチップ画面にいら立ちを感じていると答えており、タッチパネル式のチップ要求が利用者の心理的な負担になっている実態も浮かび上がる。（出典：Bankrate ／Tipping Culture Survey 2025）

テイクアウト時のチップに正解はあるのか

日本人在住者アンケートと、NY在住者への聞き取り調査は、母数や調査方法が異なるため、単純に比べることはできないが、多くの人が、テーブルサービスの有無を基準に、自分なりの線引きをしながら判断していることがわかる。

画面の表示や周囲の空気に流されるのではなく、自分が納得できる基準で決める。その感覚が、ニューヨーク、そしてアメリカの日常の中で、少しずつ共有され始めているようだ。

文／藤原ミナ