第六回:芋焼酎「赤猿」とオランダの「ゴーダ」
3年目に入りました焼酎ソムリエ大竹彩子によるこちらのコラム。今年度はチーズと焼酎とのペアリングをテーマに、ニューヨークで飲める焼酎の中から毎回一銘柄をピックアップし、それに合うチーズを紹介していきます。
月曜の夜からチーズをつまみに焼酎を一献いかがでしょうか?

鹿児島を代表する芋焼酎メーカーの1つに小正醸造株式会社があります。近年では新ブランドも次々に発売し、第二次焼酎ブームの火付け役になるのでは、という勢いすら感じさせる創業135年の伝統蔵です。その中でも今回ご紹介する「赤猿」は同蔵人気の“猿ブランド”の1つで、紫芋の王様である農林56号という希少な品種のさつま芋を原料に使用しています。紫芋を使用した芋焼酎は一時、赤ブームとして他の蔵からも数々発売されましたが、どれも比較的、甘みが強く濃い印象です。それに比べてこの赤猿は原料芋の持ち味であるフルーティーさはちゃんと残しつつ、思いの外甘さは控えめですっきりとしていて、その余韻は爽やかです。男性、女性共に選り好みせず受け入れられるこちらの焼酎はソーダ割にして焼酎ハイボールなどにするのにも適しており、近年の若者層の好みにも適応した、まさに優秀な逸品と言えます。

そして今回この焼酎に合わせるのは、オランダを代表する「ゴーダチーズ」です。オランダのチーズ生産量の60%を占め、欧州だけでなく世界的に消費されているチーズの1つです。日本ではチェダーと共にプロセスチーズの原料として主に使用されており、私たちにとっても身近な存在ですね。そのゴーダチーズの特徴は牛乳を原料とし、表面をロウでコーティングし保存することによって熟成を抑えているため、臭みやクセはなくクリーミーでさっぱりとしています。クラッカーやパンに乗せてそのままおつまみとしても楽しめますし、常温に戻して柔らかくして食べるも良し、さらに火を加えると溶けて旨味が増し、風味が豊かになります。「赤猿」に合わせるときは火を通さず、食べる30分ほど前に乾燥しないようラップなどをして常温に戻してから召し上がってみてください。「赤猿」の持つ爽やかさと「ゴーダ」のさっぱりとした旨味が相まって、口の中でそのマリアージュがぴったりと完成します。
一口メモ
今回ご紹介したのはスイス産ですが、実はフランス産グリュイエールも存在します。フランスでは13世紀頃から自国で作られたハードチーズを一般的に「グリュイエール」と呼んできましたが、先にスイス産グリュイエールがAOCという原産地統制呼称の認定を受けたために、スイス産のものしかグリュイエールという呼称を使用できなくなりました。しかし、フランスの生産者達が強く働きかけ、2012年にフランス産もその呼称を認められましたが、区別としてチーズ内部にさくらんぼ大の穴がポコポコと空いていなければならない、という条件付きでした。

大竹彩子
東京都出身。2006年、米国留学のため1年間ミネソタ州に滞在。07年にニューヨークに移り、焼酎バー八ちゃんに勤務。13年10月に自身の店「焼酎&タパス 彩」をオープン。焼酎利酒師の資格をもつ。
焼酎&タパス 彩
247 E 50th St (bet 2nd & 3rd Ave)
212-715-0770 www.aya-nyc.com
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