筋トレの問題点
フィジカルセラピストの高田です。先日PGAプロの方のための講習会を行いました。近年ゴルファーがアスリート化し、過剰な、または無駄なトレーニングでけがやパフォーマンスの低下を招いているという内容を伝えたところ、大変な反響をいただきました。実はプロでも、どのようにトレーニングプランを組み立てるかあまり理解しておらず、ジムに行きとりあえず筋トレをするという人が多いのには少々驚きました。
以前から私は「筋肉」を付けることに重点を置いたトレーニングに警鐘を鳴らしてきました。残念ながら現在のトレーニング業界は筋肉に焦点を当てがちです。それはおそらく、筋肉に重点を置いたトレーニングのほうが思いつきやすいですし、視覚的にも成果が分かりやすいからだと思います。
例えば飛距離を伸ばしたいとしましょう。筋力が弱いから「筋トレしよう! 体が硬いからストレッチをしよう!」というのは分かりやすいですね。ストレッチの問題点は次回にお話するとして、ここではまず筋トレの問題点を考えていきます。筋トレとは筋肉繊維の肥大を目的としたトレーニングを指します。要するにジムなどで負荷をかけたトレーニングなどのことです。
問題点①筋肉量が増えると必然的に可動域が減る
筋肉はゴムバンドのようなものです。より大きなゴムバンドになれば引く力が増えます。引く力は縮める働きです。ストレッチをすればいいじゃないという人もいるかもしれませんが、引く力が伸びる力に変わるわけではありません。また、筋肉量が増えると体積が関節の動きを阻止します。お相撲さんが歩くときに足をまっすぐ運べず、外側に回しながら歩くのはそのためです。
問題点②筋肉量が増えると身体のバランスが崩れる
ゴルフや野球のピッチャーなどに代表される、細かいコントロールが要求される微細運動スポーツは、感覚(身体のコントロール)が一番大切です。そしてそれはわれわれが赤ん坊の時から少しずつ脳と身体とのやり取りの中で長年培って現在に至るものです。例えば、筋トレをして腕に突然500グラムの筋肉が付いたらどうでしょう? 体幹とのバランスが崩れるのはもちろんのこと、脳がこうした身体の変化に適応し、自由自在にコントロールするまでは相当な時間を要します。その結果ちょっとした感覚のズレが生まれ、適応するまでパフォーマンスが落ちるのは言うまでもありません。
問題点③けが
無駄に筋力をつけることは関節に過度な負担をかけ、けがにつながります。私のクリニックにもこうした理由で膝や腰を痛めて来院するクライアントが後を絶ちません。よく関節を守るために筋肉を付けるなどと言う人がいますが、そんな単純な話ではないのです。
それから勘違いしている方がたまにいるのですが、筋トレではヘッドスピードは上がりません。一般ゴルファーが筋トレをする主な理由は、飛距離アップですよね。しかし、クラブの重さを支えられない、自分の体重を支えられないぐらい筋力が弱いといった特殊なケースを除き、筋トレでヘッドスピードのアップは望めません。逆に変に筋肉を付けすぎてしまうと、問題点①のように可動域が減り、ヘッドスピードが落ちてしまうこともあります。ヘッドスピードアップは、そのためのスピードトレーニングをしたほうが得策です。
最近のエクササイズブームもあり、多くの方々がトレーニングに興味を持っています。しかし、エクササイズが一概に身体に良いわけではありません。筋トレは確実に身体を大きくしますが身体を健康にする、または機能的にするとは限りません。ゴルフ世界ナンバー1だったローリー・マキロイもこのところ筋トレに励んでいるようですが、最近の過度な筋トレは危惧をするところがあります。1、2年前に比べると肩周りの動きが不自然に見えるからです。
次回はストレッチについてご説明いたします。
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Biography 高田洋平
DPT, CFMT, OCS, SCS, CAOPT,ゴルフを中心としたスポーツリハビリを学びたいと渡米。コロンビア大学でDoctor of Physical Therapy(理学療法学•博士号)を取得。現在Func-Phsyotherapyのオーナー。 ゴルフリハビリの資格:TPI(Titleist Performance Institute) Medical Profession‐Level Ⅲ。
USGA Handicap: +0.3
連絡先/yt@funcphysio.com
TEL (347)-497-0500

Biography 宮崎 太輝
NY市立大学大学院で Exercise Science & Rehabilitationを専攻し、効率よく新しい身体の動きの習得を促すために運動学習を研究。東京でプロやインストラクター、トレーナーに向けてゴルフスイングや指導法の講習を行った経験を持つ。現在はMosholu Golf CourseとWestchester Driving Rangeにてレッスン活動を行う。
連絡先/taikim@motorlearningolf.nyc
TEL (516)-467-6699
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