飯島真由美 弁護士 Legal Cafe Vol.32 相続時に負債があった場合

 ニューヨークでも日本人永住者の多くが高齢になって亡くなり、私も相続に関わる事案を扱う機会が増えています。身近な人が亡くなり、相続金の他に負債も同時にあるような場合はどうしたらよいでしょうか。

管財人の仕事
 故人の遺産を管理・分配する人を、遺言書がある場合はExecutor(遺言書執行人)、また、遺言書が無い場合はAdministrator(遺産管財人)と呼びますが、ここでは簡単に管財人と呼びます。管財人の大事な仕事の中に故人の負債や税金の支払いがあり、相続人に遺産を分配するのは、そうした支払いを済ませた後になります。負債に関しては、管財人が積極的に調べる必要はありませんが、管財人が把握しており、また妥当と思われる負債に関しては支払う義務があります。なお、任命されてから7カ月間にクレームの申告期間がありますので、その間に債権者は書面にて管財人に負債について知らせる必要があります。

負債のプライオリティ
 故人が十分な遺産を残した場合は、法的に妥当と思われる負債について全て支払う必要がありますが、遺産が全てをカバーできない場合は、次のように順位が高いものより支払っていきます。葬儀代、Administration Expenses、国や州で定められた支払い、税金、裁判による判決金など(*)。
 Administration Expensesには、裁判所への申請費用、弁護士費用、会計士への費用、また管財人への法定手数料などが入ります。クレジットカードの支払いや各種業者との契約などは、以上の支払が終わった後で初めて支払うことになり、遺産が足りない場合は支払う必要はありません。少額が残った場合は、残った債権者に対して金額に応じた割合で支払うことになっています。
 なお、日本の法律とは異なり、負の遺産が受け継がれることはありませんので、管財人も法定相続人も故人に代わって負債を支払う義務はありません。

*詳細に関しましては、専門家にお尋ねください。

 
 

今月のお店
Coffeemania
1065 Avenue of the Americas (bet. 40th & 41st Sts.)
紀伊國屋書店近くにできたコーヒーショップ&レストラン。店の奥にエスプレッソバーがある。

 
 

 

飯島真由美 弁護士事務所
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NY州認定弁護士。法政大学文学部、NY市立大学ロースクール卒業。みずほ銀行コンプライアンス部門を経て独立。2010年に飯島真由美弁護士事務所を設立。家庭法、訴訟法、移民法など幅広い分野で活躍中。趣味はカフェ巡り。