弁護士スティーブン・エプステインの知ってて安心! 法律指南 Vol. 40 ◆ロシア政府介入の捜査人事

 特別検察官(または特別顧問/独立弁護士)は、政権幹部らに関わる疑惑を調査するために任命された弁護士です。通常、特別検事は司法長官により任命されます。特別検察官は、正副大統領を含む政府高官やその周辺の人々の犯罪を捜査、追訴する権限が与えられています。

 2016年の米国大統領選挙で、ロシア政府が介入した疑いを調査するために特別検察官が任命されたのはなぜでしょうか。
 同選挙でのロシア政府介入の疑いを申し立てた直後、ジェフ・セッションズ司法長官が、同選挙期間中、駐米ロシア大使らと接触していたことが明らかになりました。したがって、セッションズ司法長官は捜査の指揮から手を引くことになりました。そのとき、ジェームズ・コミー氏はFBIの長官でした。トランプ大統領がコミー長官を解任したことに伴い、ロッド・ローゼンスタイン副長官が司法長官としてロシア政府介入捜査を担当することが決まり、「権限を行使し、特別検察官が責任を負う」 と述べました。また、ローゼンスタイン副長官は、「私の決定は、違法行為が行なわれたとか、訴追が正当化されるという結論を表すものではないとした上で、私はそのような判断を下していない。私が決めたのは、この特殊な状況において公共の利益の観点から、通常の指揮系統からある程度独立している人物が捜査を統括する必要があるということだ」と説明しました。
 ローゼンスタイン副長官は2001年から13年までFBIに勤めていたロバート・ミュラー氏を任命しました。ミュラー氏はジョージ・W・ブッシュ大統領によって任命され、バラク・オバマ大統領の下で働いていました。
 ミュラー氏は、ロシア政府とトランプ陣営の関係者とのつながりや協調の可能性を含め、ロシア政府関与の捜査を進める権限と、特別検察官として必要かつ適切と考えれば、それらの問題の捜査で浮上した連邦犯罪を追訴する権限を持つとしました。
 大部分の政府関係者は、この人選を賞賛しています。最近のトランプ氏に対する批判にもかかわらず、ミュラー氏は法執行機関のメンバーや両政党に幅広く尊敬されています。彼は独立した非党派であり、優れた捜査員として特徴付けられています。
 ミュラー氏の捜査がどのくらい続き、その結果がどうなるかは分かりませんが、どこにいきつくかはとても興味深いです。

 
 

Steven

Steven W. Epstein スティーブン・エプステイン弁護士
ブランディーズ大学、ニューヨーク・ロースクール卒。18歳から法律事務所で働き始め、2003年まで弁護士組合員として幅広い分野の訴訟を担当。04年に独立し、「Steven W. Epstein & Assosiates法律事務所」を設立した。取扱い業務は、民事訴訟、会社法(設立、契約)、家庭法(離婚)、刑事訴訟など、多岐に渡る。また、NY市行政裁判所にて非常勤審判官も務めている。

 
 

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