摩天楼クリニック「ただいま診察中」(連載39) カイロプラクティック治療 【10回シリーズ、その6】坐骨神経痛(下)

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ジョンJ. ベルモンテ John J. Belmonte D.C., P.C.
コートランドニューヨーク州立大学レクリエーションセラピー学位取得後、身体障害者セラピーに従事。1991年ニューヨークカイロプラクティック大学卒業。インターナショナル・アカデミー・オブ・クリニカル・アーキュパンクチャー修了。PGA(全米プロゴルフ協会)の医療チームメンバー。1995年、カイロプラクティッククリニック「E53 Chiropractic & Wellness Studio」を開業。

長く座っていられない、おしりから脚にかけてのだるさ、痛みやしびれ。そんなつらい痛みが続く坐骨神経痛。痛み出した当初はがまんをする人が多いかもしれないが、そのまま放置すると、座っても立っても寝ていても痛みを感じるほど悪化する可能性がある。前回はジョンJ. ベルモンテ・カイロプラクティック医に坐骨神経の場所と仕組み、坐骨神経痛がなぜ起きるかについて聞いた。今週はその治療と予防方法について聞く。

Q坐骨神経痛の治療について教えてください。
Aまず痛みの原因である炎症を軽減します。痛みのコントロールです。カイロプラクティック以外では冷却、電気刺激療法、中国の民間療法であるアキュプレッシャー、カッピングセラピー(吸い玉療法)、キネシオテーピング(キネシオロジー=人体運動機能学を基に考案された特別なテープを使った治療)など、患者の症状に合わせた方法をとります。アキュプレッシャーは、はり治療と似ていますが、はりを刺すのではなく手を使います。
 薬の助けが必要な場合は通常、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs=エヌセイズNon-Steroidal Anti-Inflammatory Drug)が勧められますが、激痛で何をしても効果のない場合は、ステロイド性の抗炎症の処方や、ステロイド注射も選択枝となります。治療を始めて4週間たっても痛みや動きが50%、つまり最初の痛みから半分に軽減されなければそこで画像診断機器での診断(レントゲン、MRI、CTなど)をします。その結果が正常であればそのまま4週間、治療を続けます。もし画像診断に異常がある場合、神経科医(neurologist)、整形外科医など適正と思われる医師と提携して治療を進めます。

Q発症原因によって治療方法も違うのですね。
A坐骨神経はL4、L5と呼ばれる第4腰椎、第5腰椎、S1、S2、S3と呼ばれる第1仙椎、第2仙椎、第3仙椎から伸びる神経がまとまって1つの太い神経となり、足先まで伸びる人間の体で一番太く長い抹消神経です(右上の図を参照)。
 坐骨神経痛を改善させるには、まず、何が原因でどのような負荷が坐骨神経にかかっているかを、さまざまな角度から調べることが重要です。
 坐骨神経への刺激が、腰椎、仙椎の椎間板ヘルニアが原因の場合は、前回紹介したようにコックス治療で椎骨を矯正して椎間板をできるだけ正常な状態に戻し、その状態を保つことで、周囲の神経や筋肉の炎症を取り除き痛みの軽減を図ります。
 腰部脊柱管狭窄症では 脊柱にある脊髄神経の通り道(脊柱管)が狭くなり脊髄が圧迫されることで、坐骨神経や筋肉が刺激されます。それを改善するために、狭くなった脊柱管を広げて神経の通り道を大きくすることで、刺激を減らします。神経まわりのスペースを広げるというと分かりやすいでしょう。
 施術には、手技による脊柱の位置の矯正で関節の可動域を改善する(manipulation)、伸ばす力で可動域を広げる(traction*機械による牽引ではない)、矯正よりやわらかな手技で、靭帯、腱、筋膜、皮膚、血管、抹消神経などの軟部組織に働きかけて関節や筋肉の動きを良くする(soft tissue mobilization)などがあります。トリガーポイントセラピーも行います。

坐骨神経

坐骨神経

Q トリガーポイントセラピーとは?
A筋肉や筋膜が固くなってできるしこりのような凝りの部分をトリガーポイントといいます。この凝りを見つけてほぐすことで、血流を良くして筋肉とそれにつながる関節の動きを良くする療法です。骨格を動かす筋肉を骨格筋といい、筋肉は筋膜で覆われています。そして骨と筋肉をつなぐものが腱、骨と骨をつなぐのが靭帯です。筋肉と関節は本来連動して動くのもですが、 腰やお尻、足などにトリガーポイントができ筋肉が硬くなると、これらの関連部分の動きも悪くなります。

Qその他にも原因がありますか?
A坐骨神経は太く長いので、多くの筋肉の間を通り、その道中で筋肉に閉じ込められて刺激や圧迫を受け、坐骨神経痛が出ることもあります。特にお尻の筋肉で多く出ます。その場合は脊柱とは直接関係がないので、筋肉を矯正して神経の通り道を広げます。ストレッチも役に立ちます。
 同じく股関節も坐骨神経の通り道です。股関節の関節炎(arthritis)や変形も坐骨神経に負荷をかける原因になります。まず股関節の治療をして、股関節の機能を回復することで、坐骨神経への刺激を軽減します。
 坐骨神経が通る筋肉に直接トラウマを受けた場合も、筋肉への治療を集中して行います。

Q治療後のケアで大事なことは?
A 適度の運動とストレッチ、そして意識して正しい姿勢を保つことです。もう一度おさらいしましょう。カイロプラクティックでは治療に手順があります。まず炎症を軽減させ、次に背骨の矯正をし、関節の柔軟性も回復させた後、アフターケアのメニューを取り入れます。患者が自分で健康維持に努めることができるようそのヘルプをするのです。もちろん体のメンテナンスとして定期的にカイロプラクティックを受けることも重要です。

Qどのぐらいの頻度で受けたらいいのでしょう?
Aその人の年齢やライフスタイルにより異なりますが、月に1回、少なくとも1年に数回です。私たちのゴールは、「患者の自立」です。私たちはその「サポーター」なのです。

 姿勢については、大変重要なことなので、改めてお話を聞かせてください。

坐骨神経痛に関する用語 (その2)

坐骨神経痛に関する用語 (その2)