こだわりづくしの「芸術」
ニューヨークの和食業界では若手料理人による前衛的な店が次々に登場し、世代交代を感じさせる中、また1つ、注目すべきすし店がアッパーイーストサイドで暖簾を上げた。

ヒノキの付け台の上で存在感を放つ中とろ
ニューヨークの和食業界では若手料理人による前衛的な店が次々に登場し、世代交代を感じさせる中、また1つ、注目すべきすし店がアッパーイーストサイドで暖簾を上げた。
「すしは総合芸術」と語るのは阿部望(のぞむ)さん(35)。ミッドタウンの老舗、寿司田で腕を振るっていたころには何度も「雇われシェフ」としてオファーを受けたが、断り続けてきた。「Sushi Noz(ノズ)」は自らも出資しオーナーになることで、自分の理想を追求できる、そこに魅力を感じたという。阿部さんが目指すのは食材から器、内装に至るまで、「本物」を追求したすし店。メニューは「おまかせ」のみ。1人300ドルと強気だ。客のリクエストを受け付けないのは、技術と味に自信を持ち、客との信頼関係を築くために他ならない。魚はほぼ東京・築地から仕入れ、米は茨城にある知り合いの農家に特注した「すし用」の新米を、また、明治26年創業、京都は飯尾醸造の無農薬米から生まれたまろやかな赤酢を使用する。特別な1つ1つがお互いを高め合うよう、鮮度が生きる艶、口に運んだときの温度、食感、風味までが緻密に計算されている。

6日間熟成させた金目鯛(千葉・銚子産)のたたきは肝じょうゆで
リゾットのように仕上げたアワビの肝めしを盛り付けながら、「こうやって(米国人に馴染みの薄い)アワビの肝を使った料理などで米国人客の反応を覆したときに、うれしくなる」と話すその表情からは、自信と謙虚さがうかがえる。
現在のおまかせはホタルイカやアワビを使ったおつまみ5品、すし13貫と巻物1つ、みそ汁、玉子。終盤に差し掛かるにつれ、この「芸術」をまだまだ楽しみたいと思わせてくれる。
181 E. 78th St. (bet. 3rd & Lexington Aves.)
917-338-1792
Noz@SushiNoz.com
www.sushinoz.com
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