クイーンズ区のハンターズ・ポイント・サウス・ウォーターフロント・パークに21日、7つの「月」が出現。日本人アーティストの長澤伸穂さんが2年かけて制作したパブリックアート「ルミネッセンス」の除幕式が27日行われた。約11エーカーに及ぶ同公園の第2期プロジェクトの一部。

「ルミネッセンス」と長澤さん。芝生の上に月を象徴したドーム型オブジェを7つ、半円形に配置し、月の満ち欠けを表現したという(photo: Yuriko Anzai / 本紙)
「自然が教える時間感じて」 潮から月の満ち欠けを連想
「ルミネッセンス」は直径6フィート(約1.8メートル)のドーム型オブジェを7つ、半円形に配置したデザインだ。7つの「月」で月の満ち欠けを象徴。それぞれを月に見立て、日中の太陽光を吸収して夜間に発光する特殊な発光性粒子を、満月や三日月などの周期に合わせた範囲に埋め込んだ。日が暮れて暗くなると、粒子が幻想的な青色の光を放つ。表面には、米航空宇宙局(NASA)のデータを基に月面のクレーターを表現した。

「ルミネッセンス」(photo: SkyScene LLC)

月の周期に合わせて埋め込まれた発光性粒子により、夜間には7つの「月」が光を放つ(photo: SkyScene LLC)
「ルミネッセンス」は同プロジェクトに設置するアートのコンペで選ばれたもの。長澤さんは4年前の冬に初めて同公園を訪れ、イースト川に波が立っていること、潮の満ち引きがあることを体感。マンハッタン区チェルシーに住みながらも「マンハッタンは島だった」「水に囲まれて生きていた」と改めて感じたという。川の音を聞いて、古代の人はこうした自然の営みから時間を感じていたことに思いを寄せた。
月の満ち欠けを連想したのはこのときだった。旧暦が使われていた時代、人々は日の出や日没、月の見え方など、天空の動きで時間の流れを感じていたことを思い起こした。「訪れる人には時間に追われる日常生活を忘れて、ただ自然に浸ってほしい」と長澤さん。「ルミネッセンス」では太陽から吸収される光の量で、夕刻からの「月」の光り方が毎日変化する。「相互に影響し合う自然の本質的な時空間に触れたかった」と話した。
長澤さんはロングアイランドにあるニューヨーク州立大学ストーニーブルックス校美術学部教授と同大学院のディレクターを務める。これまで40近くのパブリックアートやアートによる都市計画を手掛けてきた。場所の気候や歴史、地域の中での役割をリサーチし、場所の特性を生かした作品を得意とする。「ルミネッセンス」制作に当たっても晴れ、雨、雪、風など天候による場所の感じ方の違いを知るために何度も足を運んだという。

長澤伸穂さん。左奥、木が生い茂る場所に「ルミネッセンス」がある(photo: Yuriko Anzai / 本紙)
Park design is a collaboration between SWA / BALSLEY and WEISS/MANFREDI with ARUP as prime consultant and infrastructure designer.
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