連載142 山田順の「週刊:未来地図」皇帝は人種差別が大好き(中)じつはトランプと習近平はソックリだった!

北京の人口削減と新首都の建設計画

 習近平皇帝の「低端人口」追放政策の背景には、北京市の人口削減計画と新首都建設政策がある。
 習近平は、低端人口がいない、そしてPM2.5に汚染されていない北京にすることを目指し、2020年までに北京市の人口を2300万人以下に抑制する計画を、すでに打ち出している。北京市の人口は、統計上は2170万人である。しかし、統計上カウントされない出稼ぎ労働者、無戸籍者が200万人はいるとされるので、すでに2300万人を超えている。これを追放しようというのだ。
 アメリカが不法移民を収容して、国外に強制退去させるのと同じことである。
 新首都建設計画は「河北雄安新区設立に関する通知」として、2017年4月に発表された。そして、同年10月に開催された5年に1度の党大会での習近平演説の中で、「北京の非首都機能分散を要点として、北京、天津、河北の協同発展を推進し、高水準の雄安新区を建設していく」と宣言された。
 中国では、主席が1度口にしたことは、確実に実行される。河北省雄安は北京から南に120キロほど離れた荒れ果てた農村だった。そこが、計画発表から1年ほどの間に、地価は何倍にも跳ね上がり、何千人もの労働者がインフラ建設で働くようになった。
 北京では「移転国有企業89社リスト」が出回り、北京大学や清華大学の分校が雄安に建てられることが決まった。こうなると、新首都・雄安にも「低端人口」が必要になる。

中国の戸籍による人種差別の深刻さ

 中国は「人種差別と人権無視の大国」である。
 それを決定づけているのが戸籍法で、毛沢東は1958年、戸籍政策「戸口登記条例」を発令し、中国国民を「農業戸籍」と「非農業(都市)戸籍」の2つに分け、農村部から都市部への人の移動を制限した。
 こうして2つに分けられた国民は、医療、保健、教育、結婚、居住など社会生活のさまざまな面において、まったく違う生き方を強いられるようになった。農村戸籍者は、「単位」(タンウエイ)という許可証がなければ都市に向かう電車にも乗れない。また都市に出たとしても、招待所(旅館)に宿泊することは拒否されたのである。
 しかし、鄧小平が改革開放政策を打ち出すと、大量の低賃金労働者が必要となり、農民が「農民工」として都市に行くことが黙認されるようになった。
 まさに、国内の大量移民の誕生である。この農民工が、今日までの中国の大発展を支えてきたのである。
 しかし、彼らは都市に出ても、社会保険には入れない、結婚は制限される、子供は学校に受け入れてもらえないなど、完全に外国人として扱われた。中国政府の人力資源社会保障部の発表(2014年4月)によると、2017年の「農民工」の数は約2億8700万人に上るという。
 もし、これらをすべて都市戸籍に変えれば、中国はたちまちパンクしてしまうのだ。
 しかし、この差別はさすがに放置できず、国際社会からの非難を受けるため、習近平は戸籍改革を進めざるを得なくなった。
(つづく)

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【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。

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