タクシー運転手のローン地獄、なぜ　相次ぐ自殺、メダリオン購入の裏には

　タクシー業界の不振と昨年相次いだ運転手の自殺は、ウーバーなどのアプリを使った配車サービスの台頭が原因とみられてきた。しかしニューヨークタイムズはタクシー営業許可証、メダリオンの価格構造を分析し19日、２部にわたって報道。契約内容を理解せずに法外なローンを組まされた運転手が、莫大な借金を抱える結果を招いたと報じている。
　記事によると1937年に市で初めてメダリオンが導入されたとき、価格は10ドルだった。転売できたため価格は少しずつ上昇。イエローキャブというブランドもあり、85年に10万ドル、97年に20万ドルを超えた。それでも少しずつ堅調に価格が上がり続けていたため「安全な投資」と言われたという。
　しかし2002年以降、価格が急上昇。同紙はタクシー業界が意図的にメダリオン購入を持ち掛け、価格を釣り上げたと指摘。メダリオンという魅力的な財産と、銀行や民間ローン業者による甘い審査での融資、明るい未来を夢見る運転手という要素が組み合わさり、法外なローンを組まされる運転手が相次いだ。その多くは移民で、権利放棄や利子など契約内容を理解せずに署名した人もいる。
　02年から10年以上にわたり約4000人の運転手がメダリオンを購入。価格が100万ドルを超えた14年末に市場が崩壊した。現在、運転手950人以上が破産を宣告。一方で業界は大もうけした。

タクシー会社員からメダリオン購入へ

　バングラデシュ出身のモハメド・ホクさんは2004年、クイーンズ区に移り住んだ。英語が話せないためタクシー会社に就職。05年に運転手になった。週６日、午前５時から午後５時まで運転し、腰痛と糖尿病を発症。上司からの命令も厳しかった。　　
　９年が経った14年４月、電話でメダリオンの購入を持ち持ち掛けられた。「会社から解放され、自由に仕事ができる」。夢が広がった。この日のうちに５万ドルを払えば残りは分割払いできると言われ、銀行預金全額と友人からの借金でメダリオンを購入。後日、170万ドルを支払う契約書に署名していたことを知り驚愕したという。

Update 5.21
　報道を受け20日、ニューヨーク州司法長官室は業界への捜査を始めると明かした。違法行為がなかったか調べる。ビル・デブラシオ市長もローンをあっせんしたブローカーらを捜査するよう命じた。