連載256 山田順の「週刊:未来地図」「気候行動サミット」で盛り上がる国連(上) 地球温暖化より深刻な「プラごみ」の行方は?

 いま、ニューヨークは環境問題で盛り上がっている。国連総会に先駆けて開催された「気候行動サミット」(United Nations climate summit)には、世界各国から環境担当の閣僚や運動家が集まり、そのなかには環境相に就任したばかりの小泉進次郎(38)の姿もある。
 日本では彼の言動ばかりが報道されているが、ニューヨークではこのサミットのためにスウエーデンからヨットでやってきた“環境少女”グレタ・トゥーンベリさん(16)が大きく注目されている。彼女を中心に、若者たちのデモも行われた。
 そこで今回は、いま世界の環境問題がどうなっているのかを概観してみることにする。じつは、「地球温暖化」より「プラごみ」問題のほうがよほど深刻なのだ。

小泉進次郎の「セクシー」発言に批判殺到

 9月22日、翌日の「気候行動サミット」を前にした会合で、小泉進次郎・環境相が行ったスピーチが大きく報道された。それは、これが彼の外交デビューであったこともあるが、「セクシー」という環境問題を語るには場違いとも思える言葉が飛び出したからだ。日本では、多くの識者、メディアがこれを批判した。「公的な場でこんな言葉を使うべきではない」「環境問題のどこがセクシーなのか」というのだ。
 では、小泉進次郎はどう言ったのだろうか?

 “ In politics there are so many issues, sometimes boring. On tackling such a big-scale issue like climate change, it’s got to be fun, it’s got to be cool. It’s got to be sexy too. ”

 「多くの問題がある政治はときに退屈です。気候変動のような大きな問題に取り組むことは、楽しくて、クールで、また、セクシーに違いありません」

もっと重要な「今日からはもっと—-」発言

 たしかに、「fun」「cool」と並べて「sexy」などと言うのは、政治家らしくない。若者、学生がこの問題を語るような、くだけた言い方だからだ。ただし、セクシーは、この場合「悩ましい」ということだから、「気候変動」(climate change)はたしかにセクシーな問題ではないだろうか?
小泉進次郎は、この会合でこうも言った。

 “ We haven’t taken the strong action and powerful leadership since then, but from now on, from today, we want to do more. ”

 「私たちはこれまで強い行動もパワフルなリーダーシップも持ち得なかった。しかし、これから、今日からは、(日本は)もっと(強く)やっていきたい」

 私としては、セクシー発言よりも、こちらのほうがよほど重要な発言ではないかと思う。なぜなら、今後の日本の環境問題に関する姿勢を明確にしたからである。ただし、これが言葉だけだったら、問題ではある。

日本にとって重要な環境問題とはなにか?

 現在の日本にとって、環境問題は、小泉進次郎が言うように、じつにセクシーな(悩ましい)問題となっている。まず、なんといってもじきに限界が来る原発汚染水問題がある。これをどうするかで、世界中から批判を浴びかねない。海洋投棄以外の有効な方法がないからだ。
 そして、地球温暖化に関しては、欧州各国やカナダが石炭火力による発電を削減していくのに対して、「脱石炭」に舵を切れない状況にある。原発の安全性が問われ、「脱原発」の流れができたなかでは、日本は今後も石炭火力に頼らざるを得ないからだ。石炭火力はいまの日本の発電量の約3割をカバーしている。これを、なかなか減らせない。
 そんななかでさらに悩ましいのは、トランプのアメリカが「パリ協定」(Paris Agreement)から離脱を表明してしまったことだ。正式な離脱は協定発効から4年後という規定があるのでまだ先だが、トランプが大統領である限り離脱は間違いない。
 となると、途上国のCO2削減のための支援金は、日本が大きく被ることになる。なぜなら、日本はこれまでパリ協定などの取り組みに積極的に賛同してきたからだ。
 地球温暖化対策というのは、産業面からいうと「再生可能エネルギー」(renewable energy)へのシフトである。これには、膨大な予算がかかる。さらに悩ましいのが、じつは「プラごみ」問題であるが、これは後述する。

「気候行動サミット」はなぜ開かれたのか?

 トランプのアメリカが「パリ協定」からの離脱を決めた影響は大きかった。なにしろトランプは「国連からも離脱する」と言ったことがあるので、国連はあわてた。その結果、アントニオ・グテレス国連事務総長が世界に呼びかけたのが、今回の「気候行動サミット」である。
 彼は、すべての加盟国のリーダーに対し、今後10年間で温室効果ガス排出量を45%削減し、2050年までに正味ゼロ・エミッションを達成するために、2020年までに各国ができる「NDC」(Nationally Determined Contribution: 自国が決定する貢献)を持って集まってほしいと要請したのだ。
 こうして9月23日、ついに開かれた「気候行動サミット」には、世界の約60カ国の代表が登壇して、各国の取り組みを述べることになった。冒頭では、あの“環境少女” グレタ・トゥーンベリさんが、各国の代表者に対して「温暖化対策に失敗すれば、あなたたちをけっして許さないでしょう」と訴えた。
 各国の取り組みのなかで、もっとも具体的だったのはドイツで、メルケル首相は2030年までに温室効果ガスの排出量を55%減らすための新たな対策を語った。また、英国やEUは、2050年の正味ゼロ・エミッションを宣言した。
 しかし、トランプはちょっとだけ会場に姿を見せただけ。アメリカが登壇する機会は、ハナから設けられなかった。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。

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