連載314 山田順の「週刊:未来地図」新型コロナウイルス感染拡大 (上) 渡航注意、株価暴落、先行きが見えなくなった日本

 これまで2回、新型コロナウイルスについて記事を書いてきた。今回が3回目となる。ただ毎日、感染者が増え、感染拡大が続いているので、先行きがまったく見えない。
 誰もが知りたいのは、今後どうなるか? いつ終息するのか? だが、正直、予測がつかない。それで今回は、懸念していることをまとめて書いてみる。

日本への渡航警戒レベルを引き上げ

 いまや日本は中国と同じ状況になり、市中感染が起こっているので、外出を避けるようになった。この2週間、私は近所を除いて外出していない。横浜市内の繁華街には行かず、東京には1回出かけただけだ。外食の約束は相手と相談してキャンセル、仕事の打ち合わせも電話かメールで済ませている。メディア業界も現場記者などを除いて、ほとんどが在宅ワーク、テレワークになった。大手企業も同じ。どうしても会社に行かなければならない人間は、時差通勤して人混みを避けている。
今月初め、横浜にクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」が寄港する前までは、まさか、こんなことになるとは夢にも思わなかった。春になったら、アメリカに取材を兼ねて行く計画も立てていた。それはもはや無理、諦めるしかないと思っている。
一昨日(2月22日)、アメリカ国務省は、日本への渡航警戒レベルを4段階中で下から2番目の「注意を強化」に1段階引き上げた。このレベルは4段階あり、一番下のレベル1が「通常の注意」、2は「注意を強化」、3が「渡航を再検討」、もっとも厳しい4は「渡航中止・退避勧告」である。4になったら、アメリカ人は日本に来ることはなくなり、日本への便は全部ストップする。中国がいまこの状況だが、日本がそうなる可能性は十分ある。少なくとも、このまま感染拡大が続けば、じきに3にはなるだろう。(編集部注:このコラムの初出は2月25日)
この措置は、日本から見ると日本人がアメリカに容易に行けないということを意味する。渡航警戒レベルを引き上げれば、自動的に相手国からの入国を厳格化するからだ。今後は入国拒否もあり得る。

やはりダイヤモンドプリンセス検疫は大失敗

 実際、昨日、イスラエルは過去14日間に日本と韓国に滞在した外国人の入国を拒否すると発表した。いまや日本と韓国は中国と同じになった。
すでに、ミクロネシア連邦、トンガ、サモア、キリバス、ソロモン諸島、韓国、タイ、ブータンも日本への渡航制限や延期を呼びかけ、日本人の入国を拒否している。
 つくづく日本は本当に情けない国になったと思う。今回の対応で、世界的に信用を失ってしまった。まだ日本のメディアも政府も国民も、この状況を深刻に受け止めていないが、このままだと東京五輪は本当に中止になるかもしれない。
ウイルスは暖かくなれば活動が弱まる。インフルエンザと同じように終息するという見方は、希望的観測にすぎなかった。
致命的なのは、22日に栃木県の60代女性の感染がわかったことだ。この人はダイヤモンドプリンセスで陰性確認をされて19日に下船をした。下船後、21日に発熱があり、検査で陽性が判明した。これで、船内で感染が起こり、検疫体制が杜撰だったことが確定してしまった。
 下船帰国者からは、アメリカで18人、オーストラリアで6人、英国で4人の感染が判明したから、ダイヤモンドプリンセスは、「ウイルスの培養器」にすぎなかったわけだ。検疫に当たった係官、船に乗り込んだ厚労省の職員からも感染者が出たのだから、隔離はまったく意味がなかったことになる。

韓国、イタリアでも感染者が激増

 感染が広がっているのは日本だけではない。韓国では、宗教団体の信者を通して1日に100人以上の感染が判明した。イタリアでも感染者はいきなり100人を超え、国家緊急事態が宣言された。感染者が出た北部の州の町は一部封鎖された。
大丈夫と思っていた中東でも、レバノン、イランで感染者が出た。とくにイランは数十人単位で出て、死者も6人になった。
感染者が出た国、地域は、いずれも中国人渡航者、観光客が多く訪れるところだ。北イタリアのミラノ、ジェノバなどはそれに該当する。中国人の入国をいち早く規制しなかったから、こうなったといえる。日本もまったく同じで、湖北省に限ったことが間違いだった。
 しかし、いまさらそんなことを言っても仕方がない。手遅れであり、後の祭りだ。

アメリカの感染者数は本当なのか?

 中国人の渡航者といえばアメリカも圧倒的に多い。それにアメリカの大都市には世界でも有数のチャイナタウンがある。ニューヨークにしてもシアトルにしても、中国人の出入りは激しい。だから、アメリカにはすでに感染者がいっぱいいると、私は疑っている。インフルエンザ感染者のなかに、じつは新型コロナウイルス感染者が含まれているという話には信憑性がある。しかし、たとえそうだとしてもアメリカ政府は認めないだろう。
 医療費がバカ高いアメリカでは、よほどのことがないと病院に行かない。しかも、ホームドクター制で予約制であり、自分が持つ保険のカバー範囲内の医療しか受けられない。
 名古屋で出た感染者は、直前にハワイ旅行をしていた。感染先はハワイであると容易に想像できる。ところが、ハワイでは感染者が1人も出ていない。近年、中国人観光客が激増しているのに、そんなバカなことがあるだろうか。じつは検査キットが不足しているうえ、実際、ほとんど検査していないのだという。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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