連載483 山田順の「週刊:未来地図」コロナ禍ではっきりした後進国日本。 日本をダメにした「官邸官僚」政治の戦犯たち(下)

PCR検査の拡大を阻止した厚労省医系技官

 以前、このメルマガでも書いたと思うが、世界でも類を見ない「限定PCR検査」で、感染防止対策を迷走させたのは、厚労省の医系技官たちである。

 医系技官とは、医師免許を持つ厚労省の官僚で、彼らは省内や地方自治体、WHOなどの海外の関連機関でポストを得て、専門的見地から医療行政を担う。つまり、専門家ではあるが、臨床経験がほとんどなく、権威主義的で権力志向が強い。

 そのため、検査は自分たちの縄張りとして、長く民間検査を認めず、さらに、検査結果を独占してきた。国立感染症研究所は、厚労省の天下り機関で、いまも変異種の検査を独占している。

 安倍前内閣も菅内閣も、感染症に関しては興味も知識もないので、新型コロナ対策はすべて厚労省に丸投げした。専門家会議などと称しても、厚労省出身者や厚労省の息のかかった人間の集まりで、厚労省利権を第一に答申を出してきた。

 諮問委員会、分科会の会長の尾身茂氏や脇田隆字・国立感染症研究所長などは、まさにそうした人物なのだ。

 ここで、思い出してほしい。尾身氏など分科会の専門家たちは無症状者の検査は不要だとしてきたが、感染が急増するステージ3相当の地域が出始めると、「Go Toトラベル」の一時停止を強く主張し始めたのである。本当にいい加減ではないか。

トップの医務技監がPCR検査懐疑派

 なにしろ、現役の厚労省の医系技官のトップ、医務技監(事務次官に相当するポジション)の鈴木康裕氏は、PCR検査を「積極的疫学調査」のみ有効として、検査拡大を阻止してきた。

 鈴木氏は「陽性と結果が出たからといって、本当に感染しているかを意味しない。ウイルスの死骸が残って、それに反応する場合もある。ウイルスを吸い込んでも陽性にならなかった人もいる。PCR検査は完全ではない」と言い続けてきた。

 この鈴木氏は、昨年8月に退官して顧問となり、福島靖正・国立保健医療科学院長が新しい医務技監になったが、厚労省の基本方針はいまも変わらない。

 この1月22日から、神奈川県や東京都では、医療逼迫を理由に「濃厚接触者」のPCR検査をやめてしまった。これでは、無症状感染者は野放しになり、感染拡大は地下に潜る。しかし、厚労省はそんなことはおかまいなしなのだ。

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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