連載909 間に合うのかトヨタ
「EV大転換」はもはや確実な未来に!(上)
(この記事の初出は11月15日)
先日、ロイターが報道したトヨタのEV開発の方針大転換は、その後、大きな反響を呼んだ。「ついにトヨタもEVシフトを徹底させるのか」という驚きとともに、「はたして間に合うのか」と心配する声も出た。これに追い討ちをかけたのが、『トヨタとテスラ「1台の格差」8倍に初の純利益逆転』という日本経済新聞の記事だ。
いまやトヨタぐらいしかリーディングカンパニーがなくなった日本にとって、トヨタがコケてしまうことは、計り知れないダメージである。
いずれにしても、ガソリンエンジン車がEVに置き換わる未来は、もう目前に追っている。
新車販売の75%がEVとなったノルウェー
トヨタの話に入る前に、EV化が世界一進んだノルウェーの話から入ってみたい。ノルウェーの首都オスロでは、いまやガソリン車が完全に姿を消そうとしている。
街中にあるガソリンスタンドには必ず充電設備が併設され、ガソリンを入れるクルマより充電するクルマのほうがはるかに多い。もちろん、街角やショッピングモールなどの駐車場にも充電設備がある。日本車も見かけるが、ほんのわずか。いちばん多く見かけるのは、EVで世界の最先端を行くテスラ車だ。
現在、ノルウェーのEV化率はダントツの世界一で、90%に迫っている。新車販売においては、もはやEV以外は売れていない。
2021年の新車販売台数に占めるEV(BEV)の比率は64.5%、プラグインハイブリッド車(PHV)は21.7%で、合わせて86.2%。今年はこれまでにBEVが75%を超え、PHVが11~13%に減ったため、ノルウェーは完全な「EV王国」になった。これは、PHVを購入する際の税率が変更され、EVの税率を上回ったからだ。
ノルウェーでは、2025年までに販売される新車のすべてを「CO2排出ゼロ車」(ゼロエミッション・カー)にする目標を定め、それに向かってさまざまな取り組みがなされてきた。そのなかで、EV普及にもっとも効果的だったのは、税制だ。
なんとノルウェー政府は、ガソリン車に課す取得税や付加価値税(VAT)を、EVにはゼロにしてしまった。その結果、相対的にガソリン車よりEVの値段が安くなり、販売台数が一気に伸びたというわけだ。
EV化と並行して進む「脱クルマ化」社会
オスロでは、こうしたEV化とともに、じつは、「脱クルマ化」も進んでいる。都市の中心部は歩行者優先とし、道路脇にある駐車スペースを撤廃、中心部に入るクルマの数も制限した。そうして、市民には公共交通機関の利用を促し、歩道と自転車レーンを増やした。
その結果、交通渋滞はなくなり、交通事故は限りなくゼロに近づいたのである。
クルマのEV化とともに進められている脱クルマ化。これが21世紀の都市のあり方、いわゆる「スマートシティ」として注目され、アメリカでも導入する動きが出ている。なかでもニューヨークでは、ゆくゆくはマンハッタンに入るクルマの数を減らし、歩行者優先の街づくりをする計画が立てられている。
「気候変動か、経済か」という二者択一はない
ノルウェーでEV化、脱クルマ化がここまで進んだのは、じつは、この国が世界有数の金持ち国家という、身も蓋もない理由によるところが大きい。なにしろ、北海油田からは豊富な石油・天然ガスが採れる。しかも、水資源にも恵まれ、発電は99%水力でまかなえている。
これでは、環境対策にいくらでも資金を投入できる。EVを無課税にできる財源も潤沢にある。1人あたりのGDPも世界4位で約9万ドル。日本の2.25倍だから、ガソリン車に比べて高価なEV車もなんなく買えるのだ。
ちなみに、北欧諸国のEV化率は軒並み高い。ノルウェーはダントツだが、スウェーデン、アイスランドは50%を超え、フィンランドも30%に迫っている。
しかし、日本はたったの0.76%、アメリカは2.9%、中国は12.7%である。
いかに、ノルウェーが進んでいるのかわかるだろう。
(つづく)
この続きは12月13日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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