専門家インタビュー「医療編」  松木 隆志先生 Takashi Matsuki, MD

専門家インタビュー「医療編」 
松木 隆志先生 Takashi Matsuki, MD

 

ポストコロナの今こそ知ってほしい! 
子どもたちのメンタルヘルス

 昨今、メンタルヘルスの不調を訴える子どもたちが増えている。子どもたちのSOSに気づくため、大人が知っておくとよいことはなにか。精神科・心療内科医として日々患者さんやご家族と向き合う、松木隆志先生に話を聞いた。


Q. コロナ前と比較し、心の不調を抱えるお子さんが増えているとお聞きします。

 コロナが長期化してきた2020年の夏以降、お子さんに関する相談が増えました。初めは「友だちに会えない・ずっと家にいてフラストレーションが溜まる」など、学校へ行けないことで生じたストレスの相談が大半でした。社会生活が戻ってからは、「学校に行きたくない・行くのが辛い」など、人付き合いの不安から不調を感じるお子さんが多いです。人と関わる貴重な機会を奪われたことで、人付き合いが苦手になってしまった子どもたちです。

Q. お子さんの不調のサインに、どのように気づけばよいでしょうか。

 ストレスの現れ方は、言語化・身体化・行動化の3種類です。言語化は自分の感情や考えを言葉で表現すること、身体化は「お腹が痛い」などの身体的症状として現れること、行動化は暴れたり塞ぎ込んだりすることです。言語化の場合は周囲がSOSのサインを掴みやすいですが、身体化の場合は体の病気、行動化の場合はしつけの問題や反抗期など、親御さんが他の問題と取り違えてしまうこともあります。これまでとは違う身体の異常・行動が見られる場合、ストレスも疑ってみましょう。

Q. お子さんに不調が見られた場合は、どうしたらよいでしょうか。

 「学校に行きたくない」状況が続く場合、アメリカでは日本に比べカウンセリング治療は一般的で身近なものなので、まずスクールカウンセラーや子どもも診ている臨床心理士などに相談しましょう。治療の段階によっては、本人だけでなくご家族や学校・カウンセラーと協力し、チームで取り組むことが求められます。学校からサポートしてもらうためにIEPや504などの特別支援についても知っておくとよいでしょう。

Q. お子さんの心の健康を保つため、親御さんができること・注意した方がよいことはありますか。

 心の不調は、学校などの家庭外での環境がストレスの引き金となっているもありますが、視野を広げることも大切です。家庭環境が影響していることもあります。例えば、夫婦間が不和になると子どもは本能的に両親を繋ぎ止めようと、過剰にいい子になるか問題行動を起こして両親の注意を自分に向けようとします。「親と子どもの役割の逆転」も避けた方がよいでしょう。例えば、子どもに愚痴を言う、英語の通訳をしてもらうなど。本来親は、子どもが頼る存在です。親から過度に頼られると不安を感じてしまい、大人になっても不安を感じ続け問題行動が出るなど、将来の心の不調につながる可能性があります。

Q. お子さんのメンタルヘルスに心配を持つ親御さんへ、松木先生からのアドバイスをお願いします。

 お子さんの心の不調は、親御さんの不安がお子さんに影響しているケースなどもあり、その場合は親御さんの心の健康も大事です。日本人の方の場合、家庭内のことで人に助けを求めることに羞恥心を持つ方が多いのですが、悪化してからでは遅いので、ちょっとした気になることでもすぐに相談してほしいですね。

 

松木隆志先生
Takashi Matsuki, MD

精神科・心療内科医。東京医科歯科大学医学部卒業。横須賀米海軍病院、同市立うわまち病院で初期研修修了後、日本最大手の在宅医療機関の湘南なぎさ診療所で在宅医療に従事。同診療所院長を経て来米後、NT市マウントサイナイ医科大学ベスイスラエル病院精神科で精神科専門医研修修了。同病院精神科救急部部長・指導医を経て、現在マウントサイナイ医科大学精神科助教授・同医科大学モーニングサイド病院精神科救急部の指導医。診療と教育に従事する傍ら、ニューヨーク/ニュージャージーの個人オフィスで一般外来診療を行う。

Takashi Matsuki, MD

■マンハッタンオフィス
 住所: 5 West 86th Street, Suite 1A New York, NY 10024
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 住所: 1 Bridge Plaza North, Suite 675 Fort Lee, NJ 07024

Tel: 201-809-3508

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