連載1060 岐路に立つバイデン・アメリカ  「学生ローン」「人種優遇」停止で経済失速も? (完)

連載1060 岐路に立つバイデン・アメリカ 
「学生ローン」「人種優遇」停止で経済失速も? (完)

(この記事の初出は2023年7月7日)

 

54%が平均2万9100ドルの債務持ち

 このような現状を見ると、大学の授業料が無料か、極めて低いドイツや北欧諸国の制度が、どれほど若者の将来にとっていいかは言うまでもない。
 日本の場合は、授業料それ自体は低いとはいえ、システムはほぼアメリカ型なのに、奨学金は充実していない。学生ローンはほぼ高利貸しと同じだから、このことも、経済低迷の原因担っていると断言できる。
 アメリカで、2021年度に学生が借りた学生ローン総額は、947憶ドル。そして、2021年に卒業した大学生の54%が平均2万9100ドルの債務を抱えているという。
 これでは、若者の将来は限りなく暗い。
 また、学生ローンを借りた学生の約31%が大学を中退している。こうした層は学位もなく、返済するための十分な所得を稼ぐこともできないため、常に潜在的な債務不履行者となっている。
 バイデン政権は前記したように、バイデノミクスの柱として「中間層を増やす」ことを掲げてきた。中間層こそが、アメリカの豊かさの根源としてきた。
 そのために、バイデンは「最低賃金の引き上げ」と「学生ローン返済免除」などを掲げてきた。しかし、いまや、この2つを含めいくつかの政策が、暗礁に乗り上げようとしている。

バイデン政権を阻んでいる中道派の壁

 バイデン大統領は、中間層の拡大を標榜して、「アメリカ救済計画」(American Rescue Plan)というものを打ち出した。このなかに、「最低賃金を15ドルに引き上げる」ことと「学生ローン返済を免除すること」などが含まれていた。
 しかし、「最低賃金の引き上げ」は、民主党内の中道派によって阻まれた。中道派のジョー・マンチン議員ほか8人の議員が反対した。さらに、「コミュニティカレッジの2年間無償化」という案もあったが、これも阻止された。夫人のファーストレディ、ジル・バイデンがコミュニティカレッジの教師だから、このことはなんとも皮肉に満ちている。
 いずれにしても、バイデン政権はリベラルゆえに、資本主義、自由主義、自立自尊というアメリカを無視した社会主義リベラル路線、バラマキをしたがる。それによって、はたして経済が活性化し、暮らしがよくなるかどうかはわからない。
 しかし、学生ローンの免除だけは、なんとしても実行すべきだろう。アメリカの若者たちの将来がかかっている。


(了)

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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