連載1074 マアワビ、サケ、カキ—-などが食卓から消える! 海の中でも進む地球温暖化の深刻度 (中2)

連載1074 マアワビ、サケ、カキ—-などが食卓から消える!
海の中でも進む地球温暖化の深刻度 (中2)

(この記事の初出は2023年8月22日)

 

海藻類がなくなる「磯焼け」で収穫激減

 NHKの朝の連続テレビ小説『あまちゃん』では、三陸の海女による町おこしが描かれたが、海女漁が衰退したのは、海女の高齢化、地方の過疎化などではなく、温暖化によってそれまで獲れていた魚介類が獲れなくなったことも大きく影響している。
「あまちゃん」の舞台になった岩手県久慈市では、見学料を取って素潜りを観光客向けに公開しているが、いずれそれもできなくなる可能性がある。
 このことは、鳥羽・志摩の海の現状を見ればわかる。
 鳥羽・志摩の海で起こっているのは、漁師たちが言う、いわゆる「磯焼け」という現象で、コンブやワカメなどの海藻類がなくなり、海が砂漠化してしまうことだ。
 海藻のある「藻場」は、いわば「海の森」である。それがなくなれば、海中の食道連鎖が崩壊する。まず、海藻をエサにしているアワビやサザエなどがいなくなり、藻場を住処や産卵の場などにしているイセエビやカサゴといった生き物もいなくなる。
 その結果、三重県では、1966年に約750トンあった県内のアワビの漁獲高は、近年、30トンほどに落ち込んでいる。ピーク時の25分の1だ。

相模湾で始まった「藻場」再生の試み

 磯焼けの原因はいろいろあるが、直接的には、海藻を餌とするウニが大量発生したこと、同じく海藻を餌とするアイゴやイスズミ、ニザダイ、ブダイなどの植食性魚類が海藻を食べ尽くしてしまったからという。
 しかし、こうなった本当の原因は、海水温の上昇と海流の変化だ。近年、指摘されているのは、栄養分が少ない「黒潮」が大きく蛇行して、鳥羽・志摩の近海に流れ込んでいることだ。これによって、海の砂漠化が進んでしまったのだという。
 私は鎌倉育ちだが、相模湾でも磯焼けは進んでいる。江ノ島は「サザエの壺焼き」が有名だが、いま、江ノ島の海ではサザエは獲れない。近年、相模湾一帯では、サザエ、アワビ、イセエビなどはほとんど姿を消した。
 相模湾で磯焼けが深刻なのは、小田原沖である。地元の漁業者によると、以前は沖合の海底を埋め尽くしていた海藻の一種「カジメ」は、もうほとんど見なくなったという。そのため、現在、小田原の漁協では、培養した海藻の苗を植え付けて、人工的に藻場を再生する取り組みを始めている。しかし、これが成功するかどうかはわからない。
 小田原ばかりではない。遠浅の磯が広がる三浦半島は、全長2メートルを超すカジメの国内最大級の群落があったが、いま、その群落はどんどん少なくなっているという。磯焼けは、駿河湾でも大規模に起こっている。
 いまや磯焼けによる藻場の消失は、全国の海に広がっている。その結果、アワビやサザエの収穫量は、年を追うごとに減っている。
 農林水産省のデータによると、アワビの漁獲量はピーク時の1971年の5659トンから2021年には658トンとなり、半世紀で約10分の1に激減した。また、サザエは8276トンから4275トンへと半減した。


(つづく)

この続きは9月13日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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