帰国生入試を行うなど、海外からの帰国生を応援する帰国子女受入校。各校の特徴や帰国子女受け入れの意義、海外経験をもつ生徒の強みなどについて伺いました。
広尾学園中学校・高等学校
―貴校の帰国生受け入れの特徴を教えてください。
海外帰国子女受け入れ指定校第1号である本学園は、中学から海外大学進学をも意識したインターナショナルコースを2007年に開始して以来、コースとしても順調に成長し、ここ数年間はアメリカの大学を中心に10ヵ国以上もの大学に、のべ数百人レベルでの合格実績を果たしています。同コースには、毎年英語が得意な帰国生もしくはそれに準じた英語力をもつ学生 – 本学園では”アドバンスドグループ”(以下AG)と呼んでいます – 40名あまりが入学します。
―同コースには、帰国生だけでなく、これまで海外経験や英語実績のない生徒さんも半分近くおられるのですよね?
本校のユニークなところとしては、入学後英語を学びたい生徒 –”スタンダードグループ”(以下SG)と呼んでいます –も、同じく40名あまりが同コースに入り、計80名あまりでコースが構成されていることです。既に豊富な海外生活経験をもつAGと入学後に本格的に英語を学び上達していくSGが混ざることで、お互いをサポートしつつ、刺激しあえているのだと考えています。また同コース自体は、学年7クラスのうち2クラスなのですが、体育や部活、イベントなどは、学年、学校レベルで行うので、同コース以外の学生とも交流しています。
―アメリカの学校のような感じなのですか?
私自身、例年オーストラリアやイギリスの学校に生徒を引率していますが、同コースは、海外の学校と日本の学校の中間のような環境があります。制服の着こなしを含めて学校生活には、日本の学校のルールが適用されており、日本の文化を学ぶ形で運営されているのですが、インターナショナルコースは教員の半分以上が外国人であり、広尾学園独自の教科書とカリキュラムを使っていることや、積極的な発言を促す授業スタイルや、フロアでの会話も英語である生活は、アメリカの学校のような環境かと思います。
ー帰国生には、どのような資質をもった生徒を望まれているのですか?
日本とは異なる文化のなかでの生活、コミュニティをしっかりと経験し、主体的に何かに取り組んでいるか等を重視しています。またその経験を通じて、将来どのようなことをしたいのか、そのために広尾学園で何を学びたいのか、などのしっかりとした考え・目標を聞いていると、我々もワクワクしてきますね。
帰国地域別には、やはり英語圏の生徒が多いですが、これらはおそらく親御さんの要因で、アジア圏の方々も多いですし、特に地域別に有利不利があるわけでもないので、多種多様ですね。
ーちなみに、帰国生入試を受けられる生徒さんは、直前まで海外におられることが多いのですか?
本校では12月の試験だと、1年以上の海外生活かつ3年生の1月以降に帰国された生徒を帰国生入試の対象としていますので、生徒それぞれの事情によりますが、入試前は比較的日本で過ごされている方も多いように思います。やはり学校説明会などを通じて入試サンプル問題を提供させていただいたり、塾などでも本学園入試対策などを設けてくださったりするところもあるので、やはり国内におられると入試対策はされやすいように思います。
―同コースは、英語での授業中心とのことですが、それ以外には、学園生活を通じてどのような形で、海外との接点をもたれているのですか?
本校では年間100校を超える海外大学が主に放課後の時間に在校生徒に向けて説明会を実施してくれています。7月には学園卒業生で海外大学に通う生徒達がそれぞれの大学の魅力や受験体験について直接学校でガイダンスを行ったり、3月にはアメリカの大学キャンパスツアーを行うなど、学校生活の多くの場面で海外と繋がる機会があります。
ー今後さらに帰国生の受け入れを広めるためには、日本の学校でどのような変化が必要だとお考えですか?
広尾学園かつ東京という環境にいるからかもしれないですが、帰国生受け入れ環境は改善しているように思いますが、今後さらに受け入れを広めるためには、やはりまだまだ国内の受け入れ意識、多様性への寛容さ、などを高める必要があるように思います。
あとは、やはり教員の質だと思います。広尾学園には、勤続年数の長い先生がたくさんおり、その中で教育の質および細やかな生徒指導を確保しています。そうった教育環境を整えることも学校として必要なことであると考えています。
―こちらにおられる保護者、生徒さんにアドバイスをお願いします。
本校ではボランティアやインターン等、生徒の視野を広げる活動を推進しています。海外生活の経験もその1つです。海外での経験は貴重な体験ですので、今まさに海外にいるのだから、その経験を最大限味わってもらいたいということですかね。
海外だと、やはり環境の違いも踏まえて、受け身にならず自分の意見を言える、周りと協力できる、といった苦労、経験を積極的に積んでほしいと思います。
【学校の基本情報】
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教育目標
本校は「自律と共生」を教育理念とし、生徒の希望進路の実現だけでなく、その先の生涯にわたって活躍できるマインドや能力をしっかりと身につけることを目標としています。
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生徒数と帰国性の比率
全校生徒数:1654名
インターナショナルコース在籍生徒数:397名
(内国内インターからの入学者は20%弱)
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教員の特徴や採用時に重視している点
各教科の高い知識と授業レベルだけでなく、日本の私立学校で一教員として勤務するだけの柔軟さがあります。生徒の知的好奇心を向上させてくれる事が採用する上で大切な点だと考えています。
【帰国子女クラスの特徴について】
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入学の選考方法として、重視する点
ほとんどの教科を英語で学ぶ点においては、高い英語の運用能力は不可欠だと言えます。その上で、先取り学習を実施している数学や国内の大学に進学しても十分にやっていけるレベルの国語力を身に付ける事を目標としていますので、国語と算数の力もしっかりと見ます。
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入学に求める帰国子女生としての特徴
様々な個性があって良いと思っております。特別求めている姿勢や素養はありません。
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一般学級との違い
外国人と日本人の2名が担任となり、基本的な学級運営を英語で行います。学校行事は学校単位で行うものですが、合唱コンクールや文化祭等の学級単位で行う活動は英語で実施します。進路指導においても、国内大学の一般受験ではなく海外大学や総合型選抜に向けた指導を行う点も、他コースとの大きな違いです。
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特徴的な授業内容の具体例
インターナショナルコースの授業ではレクチャーだけでなく、ディスカッションやプレゼンテーション等、様々な形で生徒が意見を共有する場面があります。English Readingの授業ではオンラインで本の筆者と話す機会を設けることもありましたが、教室の枠を超えた取組みもいくつかの科目で実施しています。
【カリキュラム、進学先などについて】
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選択授業の例や豊富さについて
企業でのインターンや職業体験、ボランティア活動などは学級単位で呼びかけるものもあれば、生徒が自分で探して取組むものもあります。Kanto Plain Collge Fair(9月)やアメリカ大学のキャンパスツアー(3月)など、進学に関する情報提供の場も積極的に設けています。
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課外授業の例
インターナショナルコースでは文理選択が無く、各自が進学目標に合わせた授業選択をすることができます。2023年度は高校3年間でAPコースを13科目開講し、高いレベルの授業を受講出来るようになっています。
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他クラス、他学年、他校や卒業生との交流について
普段の学校生活では体育や部活動、委員会活動はコースや学年を跨いで活動しています。卒業生との繋がりはコースとしても大切にしており、毎年1学期には現役で海外大学に通う卒業生が、後輩に向けて自身の大学の魅力や受験体験などを共有する場を設けています。
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進学先のサポートとして行なっている取り組み
学園はAPやSAT等のテストセンターにもなっていることから、海外の大学進学に向けた環境は充実しています。奨学金の情報提供や年間100-150校の大学が本校生徒に向けた説明会を実施しているため、高校3年生の受験シーズンにはかなりの情報を持って受験に臨めていると思います。
広尾学園中学校・高等学校
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