ニューヨークを象徴する雑誌「The New Yorker」が今年で創刊100周年を迎えたことを記念し、ニューヨーク公共図書館が特別展を開催している。100年の歴史をたどり、同誌がなぜここまで愛され続けているのか、その秘密を探る絶好の機会だ。

◆ 日本人にもなじみ深い「The New Yorker」
ニューヨークといえば、自由の女神、セントラルパークなどを思い浮かべる人も多いだろうが、世界的に有名な雑誌「The New Yorker」もニューヨークのアイコンの一つ。ロゴや表紙のデザインなどは雑貨にも用いられることが多いため、日本人にもなじみ深い存在だ。

◆ なぜこれほど愛されるのか?
「The New Yorker」は、1925年にニューヨークで創刊された週刊誌(現在は隔週刊)。100年にもわたり多くの人々を魅了する理由は、その「知的でありながら遊び心を忘れない」姿勢にあり、政治や社会問題を鋭く分析する一方で、風刺漫画やユーモアたっぷりのエッセイも豊富に掲載。アートやカルチャーを愛する層からも支持を集めている。

加えて「The New Yorker」のタイトルロゴは、内容を知らない人でも一目でそれとわかるほどアイコニックな存在になっており、シンプルかつ洗練された表紙デザインのアクセントとなっている。
◆ 展示会の注目ポイント 〜3選〜
1. 広島と長崎の原爆特集
日本人として特に注目したいのが広島と長崎の原爆特集(1946年)。丸ごと1冊を「ヒロシマ」に捧げるという前例のない試みだ。ジャーナリストのジョン・ハーシーによる「ヒロシマ」特集号は、原爆の被害を生々しく伝え、世界に衝撃を与えた。この展示では、当時の表紙や編集部のメモなど貴重な資料が公開されており、戦後のジャーナリズム史においてきわめて重要な出版物を生で目撃することができる。

2. アメリカで始まった#MeToo
中居正広さんとフジテレビの性加害問題はアメリカでも報道され注目を浴びた。#MeToo(性暴力はセクハラの被害を受けた人々が声を上げ、被害を社会に訴えるための運動)に関連する展示では、2017年10月23日に掲載された記事「Abuses of Power(権力の乱用)」が紹介されている。

この記事は、映画「恋におちたシェイクスピア」や「シカゴ」など多くのヒット作を手掛けたハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインによる性的暴行疑惑を追及したスクープで、世界的な #MeToo運動の火付け役の一つとなったもの。報道の結果、ワインスタインは業界から追放され、最終的には性的暴行の罪で有罪判決を受けることになった。ジャーナリズムが単なるニュースを報道するのではなく、どのように社会を変えてきたのかを示している。
3. ジャーナリズムの裏側
「The New Yorker」が長年にわたり信頼され続けている理由の一つに、徹底したファクトチェックの文化がある。特に、政治・社会問題を扱う記事においては徹底的な事実確認が行われ、誤報が出ないようにするプロセスが確立されていることで有名だ。編集者の手書きメモから当時のファクトチェック部門のスタッフの様子が分かる写真まで、貴重な資料も展示されている。

◆ 展示を見た後はグッズも要チェック
展示を楽しんだ後は、1階のギフトショップに立ち寄るのもお忘れなく。「The New Yorker」のアイコニックなカバーアートをデザインしたトートバッグにポストカード、マグカップやジグソーパズルは、雑誌のファンならずとも魅力を感じること間違いなし。



編集部おすすめは、雑誌を象ったケースに入ったポストカード(表紙アートが100枚入って27ドル)。

取材・文・写真/藤原ミナ
「A Century of The New Yorker」
日時
開催中〜2026/2/21(土)まで
場所
New York Public Library (476 5th Ave.)
入場料
無料
詳細
https://www.nypl.org/events/exhibitions/new-yorker-100
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