皆さん、一週間お疲れさまでした。いよいよ新年度が始まりましたね。ニューヨーク育英学園も入園式、入学式ラッシュでした。私も少し参加させていただきましたが、やはりこちらの皆さんは多様ですね。もちろん、幼稚園から高校までなので、年齢による日本語のレベルや日本に対する理解度が違うのは当然なのですが、日本から赴任直後の方、そのうち日本に帰国される方、産まれも育ちもこちらの方、両親一人が日本人で普段は英語の方、はたまた両親共に日本人ではない方、など非常に多様な背景をお持ちの生徒さんがいらっしゃいました。日本のグローバル化が叫ばれて久しいですが、ここにはまさにその“グローバル化した日本”が既にありますよね。
その後、実際に中学生の授業にも参加させていただき、今度は教える難しさも体験させていただきました。新学期最初の授業ということで、中学一年生は、谷川俊太郎さんの「朝のリレー」というグローバルな詩がテーマだったのですが、こちらの子供はさすがにグローバルですね。難しかったのは、“経度”や“柱頭”といった単語で、英単語に訳すと当然わかっていますし、なにより授業が行われたニューヨークはもちろんとして、詩のなかに登場するメキシコやローマにも行ってますもんね。(さすがに、カムチャッカは。。。)さらには、『時差を考えたら、おかしいね』という鋭い指摘もでていました。日本語という意味では、日本の中学生の方がこの詩を理解できているかもしれませんが、頭に描けている詩の情景・土地勘は、こちらの生徒の方が“世界の身近さ”も含めて、この詩を感じられているのではと思いました。
ちなみに、この「朝のリレー」という詩は、1981年出版の詩集『世間知ラズ』に収められています。当時は、ベトナム戦争は終結(1975年)していたものの、ソ連のアフガニスタン侵攻(1979年)、その後のレーガン大統領(1981-1985年)による対ソ強硬路線に向かう“第二次冷戦期”真っただ中にあり、世界の緊張と不安が高まっていた頃でした。その一方で、反戦運動を通じて、「アメリカは正義の国」という既成概念が国内で崩れるなか、ヒッピーやサブカルチャーといった新しい文化(1969年 Woodstock Music and Art Festival)とともに、東洋思想やエコロジーといった非西洋的考え方への共感(Steve Jobsのインド旅は1974年)が拡がった時代でもありました。また、24時間放送チャンネルの誕生(ESPN 1979年、CNN1980年創立)による衛星中継の定着といった科学技術の進歩が、「地球はひとつ」という認識(=“グローバル・ヴィレッジ”)を高めた時代でもありました。
そのような時代にあって、谷川俊太郎氏は、「朝」という世界で共通する日常的現象を詩の中心に据えることで、特定の思想や国籍、宗教にとらわれない普遍性を持たせ、平和への祈りを、政治的な言語ではなく、やさしい詩語で包んだそうです(by Chat GPT。ほとんど。)(もう一つちなみにですが、この詩で、「朝のリレー」といいながら、出てくる場所が、実際の時差の順番通りでもなく、半島、国、都市などと場所の概念もバラバラなのも意図的だそうです。谷川俊太郎氏本人が、地球儀を目の前に、時差の概念をきっかけに書いたとおっしゃっていますので。。。詩は、奥が深いですね。)
先週は、トランプ政権の関税が世界を揺らしました。確かに、1909年以来の関税率に引き上げという意味では、歴史的な転換点(ちなみに、20世紀までは、関税は平均50%程度ですし、1930年成立のSmoot-Hawley Tariff Actで59%の関税がかけられたこともありました)になりますが、この騒動は今週も、今月も、来年も続くと思います。そんな慌ただしい時期だからこそ、逆にじっくりと過去に学びながら、子供たちがしっかりと社会に出るまでという日常とは少し異なる時間軸で、子供たちと一緒に考える機会ができればと思いました。たぶん、この中から20、30年後に世界をリードする子供たちがでてくるんでしょうしね。しかも、20、30年後に当たり前になっていることの“源流”も、今いろいろと起こっているでしょうしね。
では今週も、一休さんの教えにしたがって、こころ穏やかに。
代表 武田 秀俊
今週の1枚

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