2025年4月10日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

早くも見限られ「裸の王様」に!トランプは2年後にレイムダック化する!(下)

基本的に「非常事態」のときに下される

 アメリカは完全な「3権分立」の国である。議会が立法権を、大統領が行政権を、最高裁判所が司法権を握っている。議員内閣制である日本のように、本来行政機構である内閣が官僚によって法案を提出することはない。法案は、ほぼすべて議員により議会が提出する。
 したがって、法案がすべて執行されるとは限らないので、執行と執行の優先順位を決める権限が大統領に与えられている。これが、大統領が発する行政命令の基本概念であり、「行政権は大統領に属する」と、合衆国憲法第2条で定められている。
 また、合衆国憲法は、平時と戦時についての規定を定めていて、「大統領令」は基本的に戦時において発令される。戦時とは「非常事態」であり、その場合は議会承認を待っていられない場合があるからだ。
 ただし、平時から戦時への転換は、議会による宣戦布告によってなされることになっている。

「大統領令」を覆すことはできるのか?

 以上のことから、「大統領令」を出すにはやり方がある。まず、なんらかの非常事態宣言をする。そして次に「大統領令」を出す。これにより、「大統領令」は緊急性を伴う行政命令として機能する。トランプは、このやり方で、「大統領令」を連発しているのだ。
 じつは、アメリカでは非常事態宣言は珍しくなく、戦時でなくとも出せる。例えば安全保障が侵されているなどという理由でいくらでも出せる。現在、アメリカで機能している非常事態宣言は30以上もある。
 こうして出された「大統領令」はあくまでも行政機関に対して下されるが、行政が従う以上、民間も同じように従うほかない。この点を考えると、「大統領令」はほぼ法律と同じと言える。しかも、議会での承認は必要なく大統領のサイン1つで機能する。
 しかし、いくらなんでも限界がある。それは、どんな法律もそうであるように合衆国憲法で定められた範囲内のことしかできないこと。さらに、新たな予算を使うことはできないことである。
 したがって、議会の決議により、「大統領令」を違法とする法律を制定する。あるいは、「大統領令」によって設置された部署や機関などの予算を承認しなければ、「大統領令」は無力化できる。
 また、憲法に照らして違法であると、地方政府、企業、民間団体、野党などが提訴する方法もある。そうして、裁判所で違憲判決が出れば、「大統領令」を覆すことができる。

共和党がマジョリティの限り独裁は続く

 ただし、「大統領令」を覆すといっても、それにはかなりの時間がかかる。議会での決議には過半数の賛成が必要だし、そうして決議されたとしても大統領には拒否権があり、議会の議決を拒否することができる。
 そうなった場合は、議会は法案を持ち帰って、3分の2の賛成で再度決議しなければならない。
 現在、アメリカ連邦議会は、上院下院とも共和党がマジョリティを握っている。よって、現時点では、共和党議員が大勢寝返えらない限り議会での決議はあり得ない。
 共和党は、さる3月11日に、下院において新たな議事進行規制案を可決した。そこには、2月1日に発令された国境地帯に関連した非常事態宣言の解除を巡る採決を阻止する条項が盛り込まれていた。
 なぜ、共和党はこんな決議をしたのか? それは、万が一にも可決すると、非常事態宣言が解除されるので、大統領令が無効になるからだ。それを、共和党は阻止したのである。
 いまや共和党は完全なトランプ党。トランプの“忠犬”議員だらけである。トランプの“茶坊主”“ごますり”“ご機嫌とり”議員が幅を利かせ、誰もトランプに異を唱えない。
 これでは、次の中間選挙で民主党が大勝しない限り、トランプのトンデモ独裁帝国は続いていく。

この続きは4月11日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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