トランプが世界中からあきれられている。
「大統領令」連発で、関税戦争をふっかけ、ウクライナ戦争の停戦仲介ではロシアの味方。なにをするにも、身勝手で、オレ様は偉いのだから従えでは、もうそろそろ我慢の限界ではないか。岩盤支持者たちも、今後、物価が上がれば、「話が違う」と見放すのは間違いない。
そこで、トランプ独裁の力の源泉となっている「大統領令」について考察し、ほぼ間違いなくなった2年後の中間選挙での共和党惨敗とトランプの失権について展望してみたい。
写真:President Donald Trump signs Executive Orders, Monday, February 10, 2025, in the Oval Office. (Official White House photo by Abe McNatt)
日本は「臥薪嘗胆」しか選択肢はないのか
これまでの状況を振り返ると、日本政府(石破政権)は、「様子見」「臥薪嘗胆」路線をとるようだ。カナダやEUのように報復関税などによる対抗措置をとらず、ただ適用除外を懇願する。そうして、嵐が過ぎ去るのを待つ。そうするようである。
実際のところ、属国であるうえ、石破茂首相がまったく勇気がないため、こうせざるを得ないのだろう。
現在、「トランプ関税」は着々と進行している。すでに、アルミ・鉄鋼関税が発動され、次は自動車関税、そして相互関税と続く。相互関税に関しては、相手国が課している関税に対抗するばかりか、付加価値税や補助金、政府規制などを含んで関税を課すというのだから、そのダメージは計りしれない。
先日のG7外相会議でカナダを訪問した岩屋毅外相は、マルコ・ルビオ国務長官に関税の「適用除外」を懇願。また、その前にワシントンを訪問した武藤容治経済産業相も
ハワード・ラトニック商務長官に同じように懇願したが、両者ともまったく相手にされなかった。
ルビオもラトニックもトランプの“忠犬”。ラトニックにいたっては、関税政策をトランプに提言した男だから、当然である。日本政府は、まったく無益な外交をし続けている。
行政機関に大統領が下す「行政命令」
トランプが、世界中に関税をふっかけるというバカ丸出し政策を実行できるのは、すべて「大統領令」のおかげである。
もちろん、「性別は男と女の2つだけ」「パリ協定から離脱する」「WHOから脱退する」「メキシコ湾をアメリカ湾にする」「連邦議会襲撃事件の有罪人すべてに恩赦を与える」なども、みな「大統領令」で可能になった。
そんな制度がない日本では理解しがたいが、大統領令は絶大な力を持っている。
日本で「大統領令」と言われているものは、主に「エグゼクティヴ・オーダー」(executive order:行政命令)。これに「プレジデンシャル・メモランダム」(presidential memorandum:大統領覚書)や「プレジデンシャル・プロクラメーション(presidential proclamation:大統領布告)を加える場合もあるが、大抵の場合は、権限がいちばん強い「エグゼクティヴ・オーダー」を「大統領令」としている。
「エグゼクティヴ・オーダー」は、「大統領令」と訳すより「行政命令」と訳すべきで、大統領が行政機関に対して下す命令である。したがって、これが出ると、アメリカの行政機関は即座にこれに従わなければならない。
この続きは4月10日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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