2025年5月30日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

中国に屈服したうえ債務の上限が迫る。このままでは、株価大暴落によるバブル崩壊か!(中)

米国債を売って金(ゴールド)に替える動き

 アメリカはこれまで、既発債の借り換えや財政赤字の穴埋めのため、国債の新規発行額を増し続けてきた。しかし、今後、日本以外に大口の購入者を確保できるだろうか。
 もしもFRBが買うとしたら、それは「財政ファイナンス」だから、通貨供給量が増えてインフレが加速し、ドルは暴落する。
 これまで、世界の投資家は、ドル資産を増やすことに専念してきた。米国債は最大のドル資産だった。しかし、ドルに不安があれば、米国債を売ってドルの現金に戻し、それをドル以外のなにかに投資しなければならない。
 ユーロか、スイスフランか、日本円か、人民元かという貨幣の選択はありえない。よって、いまは、金(ゴールド)が史上最高値を更新している。
 米国債は、じつはリスクフリー資産ではなく、リスク資産である。というのは、アメリカは「戦時国際法」を制定すれば、米国債を凍結、没収するという最終手段を持っているからだ。

「債務の上限」という危機が迫っている

 5月10日、ベッセントは、8月にも連邦債務が法定上限を上回ると、議会に警告した。いわゆる「債務の上限」問題だが、この上限を引き上げないことには、アメリカはデフォルトしてしまう。政府機関の業務執行ができなくなり、職員の給料も払えなくなる。
 アメリカでは、もう半世紀以上にわたって債務残高も財政赤字も増え続け、その度に債務の上限が引き上げられてきた。債務の上限とは、要するに借金できる上限で、これを超えて国債発行ができなくなるということ。
 引き上げるためには議会の承認が必要だが、これまで何度も議会でもめてきた。
 今回は、すでに1月1日に期限が来たものを先送りされて来たが、それも限界に達するため、早急にトランプ政権の目玉とされる歳出削減と減税および5兆ドルの債務上限引き上げを盛り込んだパッケージ法案を可決する必要がある。それを、ベッセントは8月上旬までと要望したのだ。
 すでに、アメリカ連邦政府の手元資金は枯渇寸前となっている。ベッセントが見通した資金繰り動向から見ると、7月4日の独立記念日の休暇明けから議会が夏季休会入りする8月9日までがヤマ場になると見られている。
 この間に、なにかが起こると、大変なことになる。

膨張し続けたマネーサプライは減少に転じた

 アメリカが借金財政を続ける限り、ドルのマネーサプライは増え続け、世界中の公的債務も増え続ける。
 現在、世界の公的債務は異常に高い水準にあり、IMFによると、2024年末の世界の債務残高は318兆ドルと過去最大規模に達している。要するに、世界中が借金づけで、カネ余りの状況にある。
 これを加速させたのが、コロナ禍で、世界中のマネーサプライが一気に膨張した。アメリカも欧州も日本もカネ余りとなり、株価は上がり続けた。しかし、コロナ禍が終わると、FRBをはじめ各国の中央銀行は金融引き締めに入ったため、マネーサプライは、1960年代以降で初めて減少に転じている.
しかるに、株価も不動産、そのほかの実物資産もまだ高値圏にあるのはおかしい。債務が膨張し続けるなか、マネーサプライが減れば、いずれ下落局面を迎えるのが自然だ。

この続きは6月3日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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