非営利団体の予防医学研究所が2024年に主導した研究から、生活習慣の改善が早期アルツハイマー病患者の脳機能の改善または安定に効果があることが判明した。ウォール・ストリート・ジャーナルが6月29日、伝えた。

平均寿命の伸長と比例して、認知症を含む加齢関連疾患を発症する時間が長くなっている。最近の研究によると、アメリカにおける認知症の新規患者数は2060年までに約100万人に倍増すると予測。生活習慣の改善が前立腺がんや心臓病、老化のプロセスに与える影響を長年にわたり検証してきた予防医学研究所のデーン・オルニッシュ博士は、51人の認知症患者を、Ⓐ生活習慣を変更しないグループと、Ⓑ適切なダイエットと運動などを含む集中的な改善プログラムを実施するグループに分けて検証、4カ月半後に再検査した。
脳機能の変化を測定する検査では、Ⓑグループの71%が改善または悪化が見られなかった。一方でⒶグループでは改善した患者は1人もおらず、68%は状態が悪化していた。オルニッシュ博士によると、研究のサンプルサイズが小さいため、結果を一般化するのは困難だが、結果は大きな差を示しているという。「早期に介入すればするほど、予防のために必要な生活習慣の改善はより軽度で済む可能性がある」とオルニッシュ博士。「これは、新たな希望と選択肢になる」と期待を込める。
2024年に健康な人を対象に調査が行われた別の研究では、週に25分程度の適度から激しい運動を含む軽度の身体活動であっても脳の大きさと関連していることが判明している。
USC レナード・デービス老年学大学院の准教授で、10年以上にわたって脳の老化を研究してきたアンドレイ・イリミア博士は、MRI スキャンを用いて、患者の脳の老化を実年齢と比較して計算する人工知能モデルを共同開発した。このモデルは記憶に関与する海馬の大きさや、脳の最外層である大脳皮質の厚さなど、脳の老化に関連する変数を考慮し、問題やライフスタイルの改善に対して脳がどのように反応しているかをリアルタイムで監視できるという。「脳の老化が速いことは、認知機能障害のリスクが高いことと関連している」とイリミア博士。
食品医薬品局(FDA)は5月、アルツハイマー病の診断を支援する最初の血液検査を承認。この検査は既に記憶障害を経験している人を対象としており、症状のない健康な人向けではないため、複数の企業が、誰でも「脳の年齢」を測定できる血液検査の開発を進めている。長寿バイオテクノロジー企業のニューロエイジセラピューティックス(NeuroAge Therapeutics)は、数十種類のRNA分子を追跡する血液検査を提供(700ドル)。より高額なパッケージには、血液検査、脳のMRI検査、遺伝子検査、記憶力ゲーム、および総合的な脳年齢スコアを提供する分析が含まれる。
一方で懐疑的な意見もある。スタンフォード大学神経学教授のトニー・ウィス=コライ博士は「彼らが測定するものが関連性があるという科学的証拠を見たい」と、消費者に対し「慎重になるべき」と呼びかけている。彼の研究室では、脳や他の臓器系の年齢を測定するタンパク質ベースの血液検査を開発している。
ちなみに予防医学研究所のオルニッシュ博士たちが主導した研究においてⒷグループに実践させたプログラムは次のようなものだった。
食事=加工を最小限に抑えた植物性食品中心のベジタリアン食で、有害な脂肪、精製された炭水化物、甘味料を控えめにしたもの。特定の栄養補助食品も提供。
運動=1日30分以上の適度な有酸素運動と、週3回以上の軽い筋力トレーニングを実施。参加者に合わせた個人別の推奨内容も提供。
ストレス管理=認定ストレス管理専門家の指導の下、瞑想、ストレッチ、呼吸法など1日1時間のストレス管理テクニックを実施。十分な睡眠を推奨。
サポート=参加者とそのパートナーまたは配偶者は、週3回1時間のサポートグループのセッションに参加し、感情的な支援に焦点を当てた。生活習慣に関する講義や記憶力向上クラスも実施。
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