2025年7月17日 COLUMN 山田順の「週刊 未来地図」

山田順の「週刊:未来地図」 参議院選の争点は「消費減税」!しかし、どの政党も絶対に言わないことがある! (下)

消費税は社会保障をまかなう「基幹税」

 「消費減税」が難しいのは、これが基幹税の一つで年金や医療、介護、子ども・子育てなど、年々増加する社会保障費をまかなうための税金だからだ。つまり、あまりにも巨額なので、ほかに手当する税が見当たらない。
 「基幹税」とは、税収に占める割合が高い税目のことで、所得税、法人税、消費税の3つを合わせて「基幹3税」と呼んでいる。
 2023年度の国の一般会計の税収を見ると、総額72兆761億円で、その内訳は、消費税が23兆923億円、所得税が22兆530億円、法人税が15兆8606億円となっている。
 つまり、消費税は「基幹3税」の中でいちばんの高額であり、これを他の財源でまかなうのは至難の業と言える。消費税1%分の税収は年2兆円以上とされ、1%下げるのにもかなりの財源がいる。
 野党の多くが主張するように、法人税や富裕層に対する所得税を上げるにしても、額を考えると簡単にはいかない。しかも、結果的に大きな副作用を引き起こす。

法人税を上げると給料は下がり税収も減る

 れいわや共産などは、格差是正のためにも法人税の引き上げや富裕層への課税強化を主張している。簡単に言うと、金持ちから金を取って貧乏人に配れというのだ。
 しかし、これでは問題は解決しない。
 現在、日本の法人税の税率は原則として国税の23.2%だが、実効税率となるとなんと29.74%(国税23.2%+地方法人税+事業税等)になる、これは、国際的に見て相当高い。それなのに、これを共産党が言うように国税28%にするとどうなるだろうか?
 フツーに考えて、企業は人件費を減らして法人税の上昇分を穴埋めするだろう。つまり、給料は実質的に下がり、消費税を減税した効果など消し飛んでしまう。また、企業の収益も落ち込むと考えられ、税収は増えずに逆に減ってしまうだろう。さらに深刻なのは、多くの大企業が日本を出て行ってしまうことだ。
 トヨタや三菱商事などは海外に子会社を持っているから、そこに移転するのはたやすくできる。株主は約4割が外国人なので、いくら日本に止まりたいと言っても言うことを聞いてくれないだろう。大企業が一つ出て行くだけでも、数百億、数千億の税収が吹っ飛ぶ。
 富裕層の課税を強化しても、同じようなことが起こる。高額納税者の彼らの多くも、日本を出ていくことを選択するだろう。

目指すべきは緊縮財政による「小さな政府」

 本当に目覚めてほしいが、いまの日本の財政は危機的状況にある、そんななかで、このような絵空ごとのような財源論を展開し、挙句の果てに「国債発行でまかなえばいい」など言っていては、いずれ日本は確実に行き詰まる。
 日本の政治は、メディアの取り上げ方が間違っていて、一見すると与党(保守)と野党(リベラル)が対立しているように見える。しかし、与党も野党も、すべての政党が減税や現金給付などの「バラマキ政策」を掲げている。
 これを続けると、借金が積み重なり、財政が破綻して、ハイパーインフレがやって来る。
 前記したが、与野党とも誰一人、財源の話で口にしないことがある。それは、政府の縮小で、減税の財源をまかなうことだ。これが、現状できるただ一つの解決策だ。
 政治家と公務員を大幅にリストラする。そして、いらない省庁を廃止する、あるいは改編して規模を小さくする、徹底したデジタル化を進めてコストがかからないデジタルガバメントにする。官僚の天下り先となっている独立行政法人を解体・整理するなど、ともかく緊縮財政政策をとって「小さな政府」を目指すことである。
 しかし、そんなことをすれば、自分たち自身に火の粉が降りかかる。だから、誰も口にしない。

この続きは7月18日(金)発行の本紙(メルマガ・ウェブサイト)に掲載します。 
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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